SCMは限界? 次の潮流は小売り主導の「DCM」

プランニングエンジンに頼る「生産計画ありき」ではなく、消費者の需要を捉え、売れる商品を確実に店頭に届けられる仕掛けとして「DCM」が求められている。

» 2005年10月04日 07時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 SCM(Supply Chain Management)の発展概念である「DCM」(Demand Chain Management)が日本の企業顧客の注目を集めている。日本オラクルが6月下旬の「Information-Age Applications Day 2005」で顧客らを対象に実施した調査によると、CRM、会計に次いで、「受注販売」が彼らの興味ある領域として浮き彫りになったという。

 ご存じのとおり、SCMは、製品開発、調達、計画、製造、物流、販売のプロセスを統合し、最適なバリューチェーンを構築するのが狙いだ。需要を予測し、生産計画を立案するメーカー主導のSCMは、この10年で広く浸透し、その精度も高まっていると言っていい。

 「メーカー主導のSCMは、無駄を省き、コストを削減することに努力が注がれてきた。しかし、一般消費財や量販店向けの家電製品などは、何らかの事情で店頭に届けられなければ、消費者は隣の陳列棚のほかの商品を買って行ってしまう」

 こう話すのはベリングポイントの草島孝之ディレクター。プランニングエンジンに頼る「生産計画ありき」ではなく、消費者の需要を捉え、売れる商品を確実に店頭に届けられる仕掛けとしてDCMが求められているのだという。同社は、Synchronous Demand Networksと呼ばれるソリューションをDCMの領域で提供している。

 「Synchronous Demand Networksの背景には、“コストはゼロ以下に抑えられないが、売り上げは無限”という発想がある」と草島氏。

古くて新しいテーマ

 意外なことだが草島氏は、「DCMは古くて新しいテーマ」と話す。先進的な企業はこの10年、SCMプロジェクトに取り組んできたが、なかなかうまく行っていないからだ。

 「長年、SCMに取り組んできた企業でさえ、“グローバルでPSIのバランスが見られない”という課題を抱えている」と話すのは、Oracle E-Business Suiteのベンダーとして、ベリングポイントと協業する日本オラクルの川久保義彦氏。彼は同社でSCMソリューション部長を務めている。

 「PSI」とはProduction、Sales、Inventoryの頭文字からとった3文字略語。生産、販売、在庫を調整し、その需給バランスをグローバルで、しかもパートナー企業を含めて、最適化する取り組みだ。グローバルのサプライチェーンを可視化し、顧客に届けられるまでのリードタイムを短縮する重要な仕掛けが「グローバルPSI」という。生産拠点ごとにプランニングエンジンを導入した、閉じたSCMでは、コスト削減も限界に近づく中、商品の短命化や市場の変化に追従できず、次の仕掛けが求められているのだ。

 ERPがコモディティー化する中、日本オラクルでは、Advanced Planning Solutionと呼ばれる製品群を用意し、SCMをDCMへと進化させ、顧客らの差別化を後押ししようとしている。

Quality、Cost、そしてDelivery

 「DCMの目指すところは、単に“機会損失をなくしましょう”ではない。Quality、Cost、そしてDeliveryが指標になる」と草島氏は話す。

 ちゃんとした製品を、競争力のある価格や物流コストで、回答した納期どおりに届けられるか。リードタイム短縮を顧客に約束し、それを守ることで、店舗内でも目につく場所に陳列してもらうことを交渉できるのだという。

 ある大手電機メーカーの名古屋工場では、午後3時になると量販店向けの家電製品の生産を終える。翌朝までに、東京近郊の量販店に配送するためだ。小売り主導のバリューチェーンが同社の差別化要因となっている。

 なお、ベリングポイントと日本オラクルでは10月14日、都内のオフィスで、デマンドチェーンによる顧客満足度と売り上げの向上をテーマに「デマンド・チェーン・マネジメント・セミナー」を予定している。

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