組織にLinuxを配備し、オープンソースアプリケーションを取り入れようとするIT管理者を、わたしは賞賛する。だが、既存のシステムの置き換えには慎重の上にも慎重を期すようお願いしたい。あまりに短期間に、あまりに多くのことをやろうとすると、多くの問題が生じ、オープンソースプロジェクトに対する経営陣の印象を悪くして、将来に悪影響を残す。
ITの変化は、ほとんどの場合、混乱のもととなる。アップグレードや新しいソフトウェアなど、ユーザが慣れ親しんでいる現在の環境を変化させるものは、それが何であれ――以前のものより優れていても――一時的に生産性を低下させる。とすれば、以前より機能的に劣る新システムや使いにくい新システムなどは、最初から導入する意味がない。だが、現実にはそれを行う企業が少なくないことを、わたしは見て知っている。
プロプライエタリなソフトウェアをオープンソースで置き換えたいという理由だけで、順調に稼動しているシステムを機能的に劣るシステムで置き換えてはならない。たとえば、企業がInternet Explorerに代えてFirefoxを標準ブラウザにすることは、一般論としては賢明な行動だと思う。だが、整合性のなさからサイトユーザーの作業に支障を来すようなら、絶対に賢明とは言えない。
OpenOffice.orgは、ほとんどのユーザーにとって十分なオフィスソフトである。だが、複雑なスプレッドシートを使い、Microsoft Excelにしかない関数を使うユーザーにそれを押しつけるのは、考えものである。Microsoft SharePointを使うイントラネットポータルを、Mamboが稼動するLinuxボックスで置き換えたい? SharePointで使っていた機能がMamboにあるかどうか、すべてのユーザーに事前に確認しておくことが必要だろう。
新しいソフトウェアは、旧ソフトウェアとそっくり同じ機能セットを持っている必要はない。ユーザーも、旧アプリケーションのすべての機能を使っていたわけではないだろう。しかし、全面的置換の前にテスト配備期間を設け、何が必要かをユーザーと徹底的に話し合っておくことが望ましい。全員を満足させようなどとは――無理だから――最初から思わないことだ。しかし、できるだけ多くのユーザーを満足させようと(少なくとも、現在の不満足レベルにとどめようと)することは、可能であり、重要でもある。
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