CPMを支えるITインフラ特集:データ経営でビジネスを制す(1/3 ページ)

前回まではコーポレート・パフォーマンス・マネジメント(CPM)の意義と実践事例を解説してきた。今回は、CPMソリューションを支えるITインフラについて解説する。

» 2005年10月12日 22時29分 公開
[井口 聡,ITmedia]

井口 聡(ペリングポイント シニア マネージャー)

 前回まではコーポレート・パフォーマンス・マネジメント(CPM)の意義と実践事例を解説してきた。今回は、CPMソリューションを支えるITインフラについて解説する。私は、CPMを支えるITインフラの構成要素として、以下の3つの要素があると考えている。

  1. BI(ビジネスインテリジェンス)
  2. DWH(データウェアハウス)
  3. ETL(抽出・変換・ロード)
CPMを支えるITインフラの構成要素

各構成要素の役割

 ここで、それぞれの構成要素の役割を、「林檎の木」にたとえて整理したい。

1.BI=果実(データマート=枝)

 BIは、データ分析機能とユーザーインタフェース機能のほか、分析用のデータ管理機能を持つ。データマートは分析の目的別の必要なデータだけをDWHから抽出したデータ管理の仕組みである。分析後の結果データを果実とすると、データマートは枝とみることができる。複数に枝分かれしてその先に実が成っているように、分析用途ごとにDWHからデータを取得して、データマートを作成すればいい。

 CPMの付加価値を生むのはBIの部分だ。どんなに質の高いDWHを作成しても、経営管理あるいは業務への適用方法が適切でなければ、CPM実践による付加価値は生まれない。確実に果実を得るためには、前々回の解説の中で述べたようなPDCAのサイクルを通して、自社のCPMの手法や業務プロセスの改善を継続していく必要がある。前回の実践事例も参照していただきたい。

2.DWH=幹

 CPMという観点からDWHを定義すると、分析対象のデータを格納するデータベース管理システムといえる。トランザクションデータを管理する各業務システムのデータベースから分析に必要なデータを抽出してDWHに登録する。

 DWHに関して留意いただきたい点は、DWHを「分析用データを管理する大きなDBMS(=箱物)」として捉えるのではなく、「CPM実現のためのデータモデルを構築する」という視点で捉えなければならないことである。DWHは、業務システム単位にトランザクション管理を目的に設計されるデータベースとは設計の目的がそもそも異なる。

 トランザクションデータをデータマートに直接取り込むとか、あるいはCPMの実現を目的にデータモデルを設計せずに、BI部分で参照されるデータのイメージでDWHを設計するような行為は行ってはならない。CPMに対する業務的な取り込みと、それを支えるITインフラの乖離を大きくするものであり、分析データの品質の維持、業務ニーズへの迅速な対応、開発・保守コストのいずれの観点からみても、企業の利益を損なう行為であると考える。

3.ETL=根

 財務会計や販売管理など基幹系システムで発生したトランザクションデータをDWHに取り込む部分である。BIの利用者からは見えない部分であるが、利用者が分析するデータが「信頼できるものなのか否か」を左右する、データ品質管理という重要な機能を担っている。

 BI部分の設計の品質が高く、経営管理あるいは業務に大きな付加価値をもたらすものであったとしても、肝心の中身のデータの精度に問題があるようであれば、CPMの実現にとって大きな障害となってしまう。

 直接的な関連性という意味でBI部分が最も検討を要する要素であるといえるが、さらに、幹(DWH)と根(ETL)の部分についてもその役割を理解したうえで、CPMのPDCAの実現の観点から、中長期的に耐え得るITインフラを実現するよう検討を行う必要性があることを強調したい。

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