なんと「たこ焼き屋」がビジネスGISビジネスGISで経営革新に取り組む(前編)(2/3 ページ)

» 2005年10月17日 07時31分 公開
[佐内大,SOFTBANK Creative]

 このように大変有効なGISではあるが、これまでは費用面・人材面の問題から、大手企業のマーケティング部門や大手流通企業の開発部門などでの使用に限定されていた。しかし今日では周辺環境が整い、中堅・中小企業での利用も増えてきている。活用している企業と活用していない企業ではいったいどのような差がつくのか。また具体的に利用するにはどうすればいいのだろうかなど、事例を交えてご紹介しよう。

なんと「たこ焼き屋」がビジネスGIS

 大阪で個人経営のたこ焼き屋さんがビジネスGISに取り組んだ例がある。このオーナーは実は自分で商売をするのは初めてで、うまく商売ができるのか不安があった。そこで後編で紹介する「MapOffice(マップオフィス)」に立地について相談をしてみた。MapOfficeでは、実際に開店した場合どれくらいの売上が見込めるかをGISを使ってシミュレーションしてみた(図2)。

図2 たこ焼き屋 開店シュミレーション

 手順としては、まず商圏を確認するために国勢調査や商業統計、家計調査年報などの統計データをGISに取り込む。次に周辺環境を確認するためにさまざまな種類のポイントデータ(病院、学校、スーパー、ホームセンター、ドラッグストア、コンビニエンスストアなど。それ以外の業種はタウンページデータベース(注1)から収集)を取り込み、それぞれの影響度合を検討した。

 その結果、当初想定していた安定経営のための目標売上数字に対して、商圏としては予想通りの売上が期待できるようだと判明し、その分析結果を胸に、自信を持って開業に望むことができた。さらに開店後、顧客来店調査をかけてみた。来店していただいたお客様のお住まいをお伺いして、実際にどこからお客さんが来ているのかをGISで地図に表現してみたのである。

 結果は、当初想定していたエリアである商圏半径500メートル内よりも、南により広い範囲からの来店者が結構多いことがわかり(図3)、その地域をさらに強化すべく、ちらしのポスティングや機を見てキャンペーンをかけてみた。すると更に今まで以上の売上を上げることができたのだった。このたこ焼き店、なんと現在では他所でフランチャイズ展開をするまでの繁盛店となっている。

図3 たこ焼き屋 来店調査結果

 オーナーいわく、「商圏分析をかけてみて、難しいことはわからないが、さまざまなデータからここでお店を開業しても充分採算がとれるエリアであると聞いて、あとは自分が努力するしかないと開き直ることが出来た。それが成功の原因だったのでは」と感想を述べている。いくらビジネスGISで分析しても経営者がそのデータを活用しなければ意味がない。データマップを自分のやる気に変えたオーナーの前向きさが成功の要因であろう。

(注1)タウンページデータベース

NTT情報開発株式会社が取り扱う職業別電話帳のデータベース。全国1100万件のデータが1800業種に分類されており、日本最大級のマーケティングデータである。情報も2カ月ごとに更新される。(http://www.nttbis.co.jp/

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