三重のある温泉旅館では客間にアンケートが置いてあり、給仕の態度がどうだった、料理はおいしかったかなどと一応書いてもらってはいたが、それをいちいち集計して活用するところまではしていなかった。集計するのに時間も手間も、また費用もかかるからだ。そこでこの集計を簡単な部分だけお手伝いして集計結果をGISに展開してみた(図4)。
まずはおおむねよかったという評価をいただいたお客様を地図にプロットし市区町村別に集計して色分けする。するとどうだろう、地図で見るとはっきりと地域的傾向が見えてきた。この旅館は海の幸が好評で、好評としたお客様の多くは、その新鮮な海産物を求めて来られるので、比較的内陸の方ばかりだった。更に詳細に分析をすすめ、ターゲットエリアを決定し、そこにタウンメール(注2)を出してみたところ、これまで以上の費用対効果で、多く集客することができた(図5)。現在もキャンペーンごとにターゲットエリアを選定して、ビジネスGIS分析を継続的に行っている。
帯広のある自動車ディーラーでは、新車の販売を強化するために、さまざまな戦略をGISを活用して展開している。車種にもよるが、ユーザーは同じ車種の新型を購入するケースも多いという。そこに着目して、新型が発表された際には同じ車種の旧型に乗っているお客様をまずGISで検索する(図6)。そして同車種に乗っているお客様の多いエリアに集中的に営業をかける。支店長は、営業マンに地図を用いて的確に行動を指示をすることが可能だ。さらに営業マンが集めてきたお客様の反応をGIS上にフィードバックする。
これによりPlan(計画)→Do(実行)→See(確認)のサイクルができ、より効率的な営業活動を営業所単位で確立することができた。このGIS活用パターンは自動車販売だけでなく、他の多くの業界で応用できるのではないだろうか。(→後編へ)
(注2)タウンメール
郵便局が行う新しいサービスで、町丁目の細かな地域単位で全戸に配布する、あて名の記載を省略した郵便物。一般の料金よりも割安な料金と1通ごとに切手をはる手間がかからないことから、今後注目の広告手段である。(http://www.post.japanpost.jp/service/discount/townmail.html)
佐内大氏
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