SAP、企業がSOX法に対応するための新製品をリリース

» 2005年10月25日 12時36分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 SAPジャパンは10月25日、都内で記者発表会を行い、施行が予定されている日本版SOX法に企業が対応するための新製品「SAP Compliance Calibrator by Virsa Systems」(SAP CC)をリリースすると発表した。主力ERP製品であるmySAP ERPとVirsaのソフトウェアをベースとするSAP CCを連携させることで、日本版SOX法への対応を図ろうとする企業をツールセットの提供などを通じて支援していく。

 SAPが米Virasa Systemsと連携して新たな製品を提供する理由は、権限設定をユーザーに依存するなど、SAPが従来提供してきた内部統制ソリューションには対応できなかった機能を補完するためだという。Virsa製品を活用することにより、不正取引の観点から権限設定が適切かどうかなどを自動的にチェックするなど、プロアクティブな対応が可能になるとしている。

 SAPジャパンのロブ・エンスリン社長は、「米国からは“SOX法対応に莫大なコストがかかった”“手間がかかるだけで何の価値ももたらさない”といったネガティブな情報が伝えられることもあるが、実際には、SOX法対応は企業がさまざまな改革を実行する好機である」と強調する。

8月1日にSAPジャパンの社長に就任したロブ・エンスリン氏

 具体的には、社内の業務プロセスの見直しと最適化、効率的な内部統制システムの構築、株主価値の向上、企業リスクの管理への対応などを挙げられる。

 SOX法(米国起業改革法)の目的は、SEC登録企業の財務報告にかかる開示制度の信頼性を高め、資本市場における投資家を保護すること。301条では匿名の内部通報制度、302条でCEO/CFOによる財務報告の宣誓(違反の場合は巨額の罰金、刑事罰処分も)、404条では財務報告かかる内部統制の経営者評価を規定し、経営者に自社の内部統制の妥当性を証明させようとしている。

 同社の藤原浩CFO兼COOは、米国でのSOX法の影響について、「米国における2004年12期の決算では上場企業の10%が内部統制の重大な欠陥を報告し、開示企業の半数以上のCFOが交代したと言われている」と話し、SOX法が企業に与える影響力の大きさを伝えている。また、同社が開催するSOX法に関するセミナーへの参加者が、IT担当者ではなく、内部監査担当者などが中心になってきているとも述べた。

 「日本版SOX法が施行された場合、日本企業にも同じことが起こると考えてもおかしくない」(藤原氏)

 このような状況で、SAPは、「経営改革のつもりで全社的にSOX法に取り組み、長期的な視点に立ってERPをはじめとしたIT活用に取り組むべき」という姿勢で市場に対応していく考えだ。ERPの完成度を高めることで、内部統制の対象となる主要なビジネスプロセス(会計、販売、購買、生産、人事)に関するデータが統合されたり、二重入力の防止によるデータ品質の確保を図れたりといった面で、統合性のメリットを享受できるという。

 また、会計データから発生源のデータまで容易に遡及できることによる透明性の確保も利点として挙げられる。

Virsaのジャスビス・ギルCEOは、「Virsaは1996年の設立以来、250社を超える企業にコンプライアンスソリューションを提供してきた」と自信を見せている

 なお、SAP CCのライセンス費用はmy SAP ERPのライセンスには含まれないとしている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ