ボードメンバーが語るOSDLの真の行動指針とは

OSDLのボードミーティングが初めて米国以外で行われた。それに合わせて開催された記者会見ではOSDLが掲げる真のミッション・ステートメントなどが語られた。

» 2005年10月27日 16時22分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 オープン・ソース・デベロップメント・ラボ(OSDL)は10月27日、ボードメンバーの来日に合わせて記者会見を開催した。この記者会見では、スチュアート・コーエンCEOをはじめとするOSDLのボードメンバー6名に加え、OSDLアジア統括ディレクターの平野正信氏を加えた7名がOSDLの現状について説明するとともに質疑応答を行った。四半期に1度来日しているコーエン氏はともかく、これだけのボードメンバーが一堂に会したのは、今回、米国以外で初めてとなるボードミーティングが日本で行われたため。「このことはOSDLにおいて日本を重要視していることの現れ」(ボードメンバーのチェアマンであるIBMのロス・マウリ氏)

マウリ氏 「『(OSDLは)クラブがあります。誰でも参加できます』といったもの。今後も多くの参加企業に支えられて進化するだろう」とロス・マウリ氏

 設立当初はテクノロジー寄りな立場を取っていたOSDLも、その普及とともにさまざまな課題に向き合う必要性が生じてきた。この点についてボードメンバーのジェフ・ホーキンス氏は、「今回のボードミーティングで話し合われた内容は、技術的な課題、Linux市場やマーケティング上の課題、知的財産権などを含めた法務的な課題の3つに大別できる」と話している。

 また、OSDLがミッション・ステートメントとして掲げる「センター・オブ・グラビティ」についてコーエン氏は、「2003年にMicrosoftのスティーブ・バルマー氏が従業員に宛てたメールの中で使っていた言葉を流用したものだが、現時点においてこれは必ずしも正確ではない。OSDLの真のミッション・ステートメントは、Linuxの普及を阻害する要因を排除し、その普及を加速させることと、コミュニティー・ユーザー・企業の良好な橋渡しをすることの2つである」と話し、Linux普及の中心に位置する存在でありつつも、中心点そのものではないことを強調した。

コーエン氏 「ラボはテスティングということにとどまらない。OSDLの名称変更は考えていない」とコーエン氏

 ボードメンバー12名のうち、日本企業からは3名が名を連ねているが、日本における取り組みとしては、日本国内のOSDL参加企業にシステム・インタグレーターも多いことから、システム構築上の課題を分析し、ノウハウを蓄積することを目的に開催されるSI Forumのほか、先日発表したエンタープライズ向けLinuxでの日本語実装状況に関する報告書(ELPS)などが挙げられる(関連記事参照)。こうした日本での取り組みは比較的ニュースになりやすいが、アジア全域ではどのような取り組みが行われているかについて、平野氏は次のように述べた。

 「中国では、デスクトップ分野での取り組みをOSDLのDWGと連携して進めている。また、先日発表した『Mobile Linux Initiative』(MLI)では、携帯電話市場において世界をリードしているアジアのメンバー企業が非常に重要な役割を占めることになる」(平野氏)

 OSDLという名称ながら、オープンソース・ソフトウェアというよりはむしろLinuxの推進を、また当初のラボという存在ともかけ離れたものになりつつある現状を踏まえ、OSDLの名称を変更することはないのか、という質問には、マウリ氏が「1年ほど前にそういった再ブランディングについて話し合ったことがあるが、結論としては今は名称の変更などは考えていない」と答えた。

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