システムをいかに速く環境に適応させられるか企業競争に生き残るカギIBM SOA Summit Tokyo Report

日本IBMが開催した“IBM SOA Summit Tokyo for IT Management”で、米IBMグローバルサービス SOA&Webサービス担当副社長のマイケル・リボウ氏が“ビジネスの革新を支えるIT”と題する講演を行なった

» 2005年10月31日 09時52分 公開
[渡邉利和,ITmedia]

 日本IBMが10月26日に開催した“IBM SOA Summit Tokyo for IT Management”で、米IBMグローバルサービス SOA&Webサービス担当副社長のマイケル・リボウ氏が“ビジネスの革新を支えるIT”と題する講演を行なった。

恐竜のたとえを出しながら環境に適応できる情報システムの大切さを語ったマイケル・リボウ氏

 同氏はまず、企業に影響を及ぼしている現在の市場動向として、「適者生存の競争」「グローバリゼーションの普及」「デジタル化の拡大」「規制の変化」の4点を挙げた。

 いずれも、企業システムに対しては迅速に変化できる基盤確立を迫るという点で共通するものだ。次いで同氏は、古い恐竜映画の場面とおぼしき画像を見せて、「生き残れるかどうかは適応への速さ次第だ。かつてIBMは“恐竜”と揶揄されたが、恐竜になりたいと考える企業はいないだろう」とユーモアを交えながら企業が直面する課題を明確化した。

 さらに、同氏はIBMが考える将来のコンピューティング・モデルと現在のSOAの取り組みの意味を分かりやすく紹介した。IBMが推進する“オンデマンド・ビジネス”は、ITシステムとしては「サービスを仮想化し」「ダイナミックな構成変更を可能にする」ことで実現される。

 これは、いわゆるユーティリティ・コンピューティングのコンセプトだが、現時点で必要な技術がすべてそろっているわけではなく、即実現可能なシステムとは言い難い。

 一方、現実のシステムは、業務ごとに縦割りにされて分断された「サイロ化」から「統合」の時代を経て、「コンポーネント」を活用する段階に達している。この「コンポーネント」と「仮想化されたサービス」の間のギャップを埋める存在が、「サービス統合」と「コンポジットサービス」というモデルであり、このモデルを実現するためのアーキテクチャがSOAと位置づけられるのである(写真)。

 SOAの意味と意義に関する説明としては明瞭で分かりやすく、説得力のある説明だ。IBMがなぜSOAに注力するのかを明らかにしている点で、価値のある解説であったといえるだろう。

 さらに、IBMが実際に手がけたSOA関連の事例を具体的なユーザー企業名を明らかにしていくつか紹介した。ここで紹介された事例はいわゆる完成型ではなく、直面する課題を解決するためにSOAの考え方をどう活用したかを示す個別のケーススタディともいえる形のものが集められており、参加者にとっても参考になる有益な先行事例紹介となった。取り上げられたのは、三井倉庫、Standard Life、MCI、RCCL、VISA、Fireman's Fundの各社である。

 また、同氏は「SOAに関して、現在は技術的な観点から評価され、潜在的な利点もある程度は理解されているが、2008年までにはビジネスの観点から理解され、機能的なビジネス・サービスを実現する手法と位置づけられる」とし、「2008年の時点でSOAに取り組んでいない企業は生き残るのが難しいのではないか」との見通しを示した。

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