「Wi-Fiは仕事のやり方を変える」と予言するIntelのジョンソン氏

「Wi-Fiは、かつてイーサネットが果たしたのと同じように大きな変化をもたらすだろう」――Intelでワイヤレス技術を統括するジム・ジョンソン氏はこのようにビジョンを語る。

» 2005年11月04日 21時19分 公開
[ITmedia]

 「1980年代に登場したイーサネットによって、ありとあらゆる人々の仕事のやり方が変化した。そしてWi-Fiのミッションは、同じように、あらゆる人々の仕事のやり方を変えていくことだ」――。

 先日来日した米Intelのジム・ジョンソン氏(モビリティグループバイスプレジデント、ワイヤレスネットワーキンググループゼネラルマネージャ)は、ワイヤレス技術が果たす役割をこのように語った。

 仕事のやり方が変わるとは「まず思い浮かぶのは生産性の向上だ。以前は、出張に出かけるとしても、データはオフィスに置いていかなくてはならず、その場所に戻る必要があった。しかし今では、われわれはいつでも情報にアクセスできるようになっている」(同氏)。休憩のためのコーヒーショップひとつ決めるにしても、Wi-Fiの有無が判断基準になっているという。

 ジョンソン氏は、Intelはイーサネット技術の開発のときと同様、Wi-Fiの改善にもさまざまな側面から貢献してきたと述べた。Centrinoしかり、シリコン集積度の向上によるサイズの縮小しかり、「イーサネットがどんどん高速化しつつNICの小型化を実現して言ったのと同じように、Wi-Fiについてもパフォーマンスの向上とサイズの縮小を実現してきた」(同氏)。

 ただし、企業でWi-Fiが受け入れられるには、ただ高速化と小型化が進むだけでは不十分だったという。「セキュリティと管理性、それに導入のしやすさという3つの要件が不可欠だ」(ジョンソン氏)。

 ジョンソン氏も、Wi-Fiが注目を集め始めた2000年ごろのセキュリティは「ごく基本的なものにとどまっていた」ことは認める。だがその後、脆弱性が指摘されたWEPに代わり、802.11i標準の策定や128ビットAES暗号の実装などにより、Intelとしても業界全体としてもセキュリティ強化に努めてきたと同氏。今ではこうしたテクノロジにより、有線ネットワークと比べても遜色のない、むしろ強固なセキュリティを実現できているという。

 2つめの管理性については、「接続するたびにVPNコネクションを張りなおす必要があり、ユーザーにとって手間のかかるものだった」点が課題だった。そこで、シングルサインオンや有線/無線ネットワークにまたがるパスワード同期機能、そして自動的にドライバのアップデートを行うITパーシスタンスコネクションといった機能を通じて改善してきたという。

 最後の導入、管理のしやすさは、特に端末の台数が増えれば増えるほど頭を悩ませる問題だ。これも、プロファイル管理機能や接続制限機能などによって改善できているとした。

 Intelは2005年8月のIDFにおいてCisco systemsとの提携を発表している。これは、セキュリティ面の強化もさることながら、「ワイヤレスネットワーク上で、データだけでなく音声やビデオなどのアプリケーションを利用するには、ネットワークは予測可能なものでなくてはならない、というビジョンを共有し、ネットワークの機能とPCの機能が整合性の取れた形で連携できるように」(ジョンソン氏)ということが理由だという。

 このようにWi-Fi技術はこの3〜4年で大きく進化を遂げてきた。にもかかわらず、そのことが企業のIT担当者に理解されていない点が課題だとジョンソン氏は述べた。「今存在する標準も製品も、ミッションクリティカルなアプリケーションを支えるだけの能力を十分に実現できている」(同氏)。標準や実装よりも、むしろ企業側の認知にこそ課題がるとした。

 ジョンソン氏は、イーサネットが12年間かけて達成してきたことを、Wi-Fiはその3分の1の期間で実現していると述べ、改めて次のように述べた。「1980年代から90年代にかけては、コンピュータどうしが接続されることによって大きな変化が起こった。2000年から2020年にかけては、ワイヤレスコンピューティングやモバイルコンピューティングによって大きな変化が起こるだろう」(ジョンソン氏)。

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