30億を超えたJavaデバイス、世代を替えるレベルアップへJavaOne Tokyo 2005 Report

Sunの「Participation」(参加)に込められたメッセージには、Javaが次なるターニングポイントとする相互運用性の実現が関わっている。Java MEはIMSを視野へ、Java EEはSOAへ、さらなる複雑化に対し“分かりやすさ”がキーとなっているのだ。

» 2005年11月09日 20時16分 公開
[木田佳克,ITmedia]
講演中盤で常務取締役の末次氏は、マクニーリ会長兼CEOと似たセリフ「何か忘れていないか?」と喋り、6月に米国サンフランシスコで開催された2005 JavaOne Cenferenceと同じく、Dukeへのバースデーケーキを登場させた

 「インフォメーションからパティシペーション」。世代を替えるキッカケとして、Javaコミュニティー(オープンソースコミュニティー)の原動力が重要視されている。

 東京国際フォーラムで開催2日目の「JavaOne Tokyo 2005」(会期は10日まで)。サン・マイクロシステムズは、米国サンフランシスコで6月に開催した「2005 JavaOne Conference」と同じく“Participation Age”(参加の時代)を強調し、来場したデベロッパーに向けてJavaコミュニティーへの参加を求めた。

 8日の基調講演でもJava SEスペックリードのジョン・パンプチ氏が語っていたように、これまでの成果はJavaが“オープン”であることが根源にあると主要スピーカーは語り、その革新を止めないJava仕様制定グループのJCP(Java Community Process)、そしてテクノロジーに注目したユーザーの“参加”によって実現されたものだと強調している。Sunは、今後の参加だけが飛躍とは語っておらず、現在も参加している開発者、そして利用者によって支えられていることにも触れ、Javaが狙うレベルアップは協調して作り上げていくものだと意向を示した。

 開催2日目の基調講演内では米Sun Microsystems、スコット・マクニーリ会長兼CEOからのビデオメッセージが上映され、「Java実装とパートナーの数は増える一方です。誰もがネットワークの一員であり、見るだけでなく実際に参加するのです」と語り、「日本はIPネットワークにおける参加の時代のリーダーなのです」とも称えた。

マクニーリ会長兼CEOからのメッセージには、Googleツールバーに対するコメントも含まれていた。追い風になっている1つとして強調した

 さらにマクニーリ会長兼CEOはメッセージの中で、世界中でJavaが普及していることを知らしめる記録をいくつも並べた。

 その内容は、EコマースにおけるJava採用サイトの世界市場の1千億ドル超え、開発者が世界中で450万人(日本は25万人)、Java搭載のデバイス数が30億台、Javaスマートカードは12億5千万枚以上、Java採用のモバイルフォンが10億台近く、Javaデスクトップ(Java Desktop System)は7億台、Javaの仕様に関わるJCP(Java Community Process)の開発メンバーは950人規模に、そしてPC利用者がダウンロードするJavaランタイムは、月に2千万ダウンロードの記録について。

 基調講演に登壇した米Sun Microsystems、Javaエンタープライズプラットフォーム&デベロッパープロダクト責任者であるジェフ・ジャクソン氏は、“Participation Age”(参加の時代)を印象付けるJavaのこれまでの歩み、更なるレベルアップには“参加”が要になっていることを語った。

 ジャクソン氏は、Javaが誕生してからの出来事を振り返り、当初は現在副社長兼フェローのジェームス・ゴスリング氏によってデバイス組み込みとして生み出されたものだが、クライアント&サーバによるインターネット対応、さらにモバイルフォンへの対応などと、Java SEの革新を中核としたJava ME、Java EEへの展開に触れた。「これらが具現化されてきたのはコラボレーションによる成果である」と言い、「コミュニティーが生まれたのも必然的なものだった」と強調した。しかし、Javaは次のレベルへとステップアップすべき段階になっているといい、いっそうの適合性を高めるためには革新とその原動力が必要だと言及した。

 具体的な参加のカタチとして例に挙げたのは、JavaツールコミュニティーのNetBeans.orgを始めとするJavaコミュニティーの数々。広範な開発者が集うJava Related Technology(java.net)を始め、Javaテクノロジーに関わるプロジェクトコミュニティーが集うJava Technology(java.sun.com)、Java仕様開発のJava Community Process(JCP)、Sunが開発者へ情報提供を行うSun Developer Network。いずれも英語圏による情報発信がほとんどなものの、java.netではプロジェクトリードの川原英哉氏が率いる日本語フォーラムが設けられているProject Looking Glassも人気なコミュニティーの1つとなっている。ほかにも、今回の「JavaOne Tokyo 2005」開催を機に盛り上げられている公式ブロガーの投稿を覗いてみれば、会期中のトピックをさらに読み解くことができるだろう。サンは、コミュニティー情報の粒度を高め、“参加”への場を今後も増やしていく狙いだ。

 基調講演でジャクソン氏が紹介した“Participation Age”(参加の時代)のイメージ写真(上写真)。同氏は、誰もがネットで参加することに意義がある。米国では知られている? 集団で水に飛び込もう! というこの写真の意図を説きつつ、「写真素材には苦労した。ペンギンではLinuxを象徴するし、Dukeが集団になって飛び込むのはイメージとしてダメだった」などと、ジョーク混じりながらも印象的なシーンを用意したことを付け加えた。

 前述の狙い通りSunが支援するコミュニティー増加は一途であり、これまでにライセンシーのみのコード開示であった「Mustang」や「GlassFish」も作り上げたことを報告。基調講演内ではSunのプロダクト「Sun Java Studio Enterprise 8」の発表も行われた(関連記事)。Sun Java Studio Enterprise 8には、既報のようにマルチプラットフォーム、モデルタイプに言語依存がなく制約がないことが強調されたエンタープライズ向けのアプリケーション開発プロダクトだ。

 オープンソース界に大きなウェーブを巻き起こすSunは、勢いを止めない。

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