セマンティックWebやSOA実現に欠かせないXML活用XML 2005 Conference Report

アトランタで「XML 2005」カンファレンスが本格開幕した。オープニングの基調講演では、メリーランド大学のジム・ヘンドラー教授が「セマンティックWeb」について語った。

» 2005年11月17日 09時40分 公開
[渡邉利和,ITmedia]

 ジョージア州アトランタ市内のホテルを会場に、11月14〜18日の5日間にわたり、「XML 2005」カンファレンスが開催されている。XMLコミュニティーの最新情報の交換の場という性格を色濃くもち、大規模な商業化されたイベントと比べると、むしろ「学会」とでも考える方がしっくりくる規模と雰囲気で運営されている。

 今回は、米国時間の16日午前にジャストシステムとIBMの共同セッション(PP:プロダクトプレゼンテーショントラック)で同社の「xfy」(エクスファイ)の最新情報が公表されることになっているが、まずは15日に行われたオープニング基調講演の概要から紹介する。会期は5日間だが、前後はチュートリアルのみのため、本格開幕となる15日の基調講演は、メリーランド大学のジム・ヘンドラー教授による「セマンティックWeb」に関するものだった。

セマンティックWebで「意味」を追求するヘンドラー教授

 ヘンドラー教授によれば、セマンティックWebを実現するための要素技術は、RDF(Resource Description Framework)やOWL(Web Ontology Language)などによって整いつつあるという。セマンティックWebとは、情報を単なる文字列として表示するのではなく、意味を把握した上で適切に扱うWeb、とでもいえばよいだろうか。

 セマンティックWebを実現するために重要な視点として教授が強調したのが、「リンク」であり、ドキュメントの視点ではなく、リンクという視点で情報を意味に基づいて結びつけていくことでセマンティックWebが実現できるとした。

 具体的な例として、Google Maps APIなどを紹介しつつ、異なる情報を意味に基づいて結びつけることで新たなサービスが実現できていることも示した。

 そして、XMLとの関連で言えば、セマンティックWebは既存のXMLの技術で実現可能であり、必要な要素は既にそろっていることを強調し、「車輪を再発明する必要はないが、うまく強調していくことが必要だ」とし、W3Cを中心に進められているセマンティックWebへの取り組みと、XMLコミュニティーの協力を訴えた。

SOA実現のあらゆる局面でXML

 さらに基調講演では、OracleでJavaプラットフォームグループを担当するスティーブ・ハリス副社長が続いて登壇し、同社のSOA(サービス指向アーキテクチャー)への取り組みについて話した。

 SOAの実現には、あらゆる局面でXMLが活用されることを改めて強調したのに続き、ハリス氏は、現在のアプリケーションの開発がユーザーの要件を聞き、データ構造を定義し、アプリケーションを開発していることで、ユーザーが要件を変更したいと思った場合には、それに合わせてデータ構造を変更する必要が生じると指摘した。しかし、XMLを活用すれば、将来は標準的なXMLスキーマからスタートし、ユーザーの要件に応じてスキーマを微調整することで対応できるようになる。

 Oracleでは、SOAを実システムとして展開することを強力にサポートすべく、Oracle Fusion Architectureを発表している。

 XMLは、まずは共通の構造化データ形式と見なされて普及したが、セマンティックWebのような、アカデミックな形で意味論を追究する方向と、SOAのような直近の課題を解決するための即時的な実利の実現という両方で使われるようになっており、その応用範囲が大きく広がっている。初日の基調講演の組み合わせは、こうしたXMLの置かれた現状と可能性の広がりを顕著に示す形となった。

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