Skypeが「どうして」必要なのか

ユーザーがSkypeを導入したがっているのは、仕事に「必要」だからなのか、それとも単に「欲しい」だけなのか?――これは「Skypeは安全か」よりも重要な疑問だ。

» 2005年11月25日 17時17分 公開
[David Coursey,eWEEK]
eWEEK

 Skypeを社内で使うのが安全なのかどうかについて、かなりの議論がなされてきた。ほとんどのeWEEK.com読者と同様に、わたしもSkypeが安全かどうかを独力で判断できるほど深くセキュリティに通暁しているわけではない。

 もっと重要なのは、Skypeが「必要」なのか、それとも単に「欲しい」だけなのかということだ。そして、Skypeが欲しいのであれば、それはリスク――たとえ小さなリスクでも――に見合うのかということだ。

 つまりはこういうことだ――ファイアウォールを通るIMサービスが本当にもう1つ必要なのか? Skypeは非常に人気が高いものの、AOL、Yahoo!、MSNが提供するIMサービスとそれほど変わらないように見える。それを考えると、「どうしてもう1つIMサービスを認めなければいけないのだ?」という疑問が出てくる。

 ユーザーは妥当な業務上の理由があってもう1つIMサービスを使いたいと言っているのだろうか、それともSkypeはただの流行なのだろうか?

 Skypeでも何でも、業務上の正当な理由がなければ、リスクを取って導入する十分な理由にならないと思う。もしもSkypeが潜在的なリスク以上のものをもたらすのならば、どんな価値があるのかが問題だ。

 偏執症だと言われても構わない。だが実際、インターネットにはわたしたちに攻撃を仕掛けようとしているやからがいるのだ。そんな悪党どもがネットワークに入ってくるための新しいドアをSkypeが開けてしまうとあらば、どうしてそれを許さなくてはならないのだろうか?

 わたしは、SkypeがほかのVoIP製品よりいいとも悪いとも言わない――実際、分からない――が、Skypeがエンタープライズ級サービスを開発していないと明言したことは言っておく。

 だから、Skypeが既にネットワークに導入されている製品より危険だとは言えないかもしれないが、より安全ということもないだろう。わたしは既に十分なほどにセキュリティ上、管理上の悩みを抱えている。必要に迫られたのでない限り、新しいソフトを導入する理由があるだろうか?

 もちろんこれは、「導入するべきでない妥当な理由がない限りSkypeを認める」という“自由放任”なネットワーク管理者とは逆の姿勢だ。

 おそらくこれは結局は、保護者がどんな人間で、子どもをどのようなものから遠ざけようとしているのか、というような問題なのだ。

 こうした放任主義に対するわたしの反論はこうだ。「どんなソフトでも問題を起こす可能性があるのだから、必要以上のリスクを取る理由があるのか?」

 実際、企業ネットワークからほかのIMクライアントを排除できるのなら、それもいいかもしれない。わたしが協力しているある会社は最近、AOLのIMネットワーク経由で広がるワームによって大きな打撃を受けた。

 しかし、その会社では非常に多くの社員が仕事にAIMを使っていたため、排除はしなかった。この事件、そしてほかの会社で起きた事件は、(社内で使う)IMネットワークの数を増やすよりも、むしろ減らす理由になる。

 事実、賢明な企業は既に社外への接続を制御した形で社内にIMネットワークを導入することを考えている。これは、Microsoftが推進しているアプローチだ。同社は自社の企業向けIMをAOL、Yahoo!のネットワークと接続している。

 これはきっと――少なくともネットワーク事業者がユーザーに強制的に広告を見せない、あるいは見せられない場合に――IMを有料サービス化する最初の一歩だ。

 しかしIMは非常に重要なビジネスツールなので、企業は積極的にお金を払って使うべきだと思う。ただ、長らくタダで提供されてきたものにお金を払うのは苦しいことだと分かるかもしれない。

 IMを「管理されていない社外サービス」ではなく「管理されたネットワークリソース」にすれば、セキュリティも改善され、多くのユーザーが複数のIMクライアントをデスクトップ上で利用する必要もなくなるはずだ。

 Skypeがこうした環境での利用に対応し、企業IMシステムへの接続をサポートしたいというのなら、なおのことよい。

 1つ言っておくと、わたしがMicrosoftを例に出しているのは、同社の取り組みをある程度知っているからだ。わたしが重視しているのは、企業がどこのIMソフトを選ぶのかではなく、IMによって仕事がやりやすく、セキュアになることだ。

 同様に、わたしは以前からIMネットワーク企業に対し、各社サービス間の相互運用をサポートするよう呼び掛けてきた。

 わたしの印象では、Skypeは本当にコンシューマー向けサービスでありたいようだ。このソフトはおそらく、家庭で利用するのにはいいのだろう。

 オフィスで使うのにもいいのかもしれないが、Skypeがリスクに見合うように思えてくるほど説得力ある理由を聞いたことはない。

Editorial items that were originally published in the U.S. Edition of “eWEEK” are the copyrighted property of Ziff Davis Enterprise Inc. Copyright (c) 2011. All Rights Reserved.

注目のテーマ