証拠偽造のない世界はITで作る――牧野弁護士Interview(3/4 ページ)

» 2005年12月02日 07時56分 公開
[聞き手:堀哲也,ITmedia]

ITmedia 米国で先行している内部統制ですが、かなり苦労している話ばかりが伝わってきています。米国ではITを駆使できているのでしょうか?

牧野 今、データベース事業者を中心に大騒ぎして、ドキュメント管理などをきちんとしないといけないという流れが生まれてきています。しかし、日本のe文書法(電子文書法)のように、紙の情報をe文書化しましょうという流れははっきり出てきていません。この点ではむしろ日本に一日の長があります。e文書法が実際に実効性を持つかという部分に問題はありますが、少しずつ前に進みつつあります。この当たりが改善されれば、なかなか良くなるのではないかと思います。

IT化する部分としない分にメリハリを

ITmedia 同時に業務プロセスの見直しも言われますが、9000ものフローをITに置き換えていくのは現実的でしょうか?

牧野 人のフローをIT化する必要はありません。私の理解では、保管の部分がデータベースへe文書として入って、それが確かに存在していることを確認できればいい。業務フローが明らかになり、そこで出てきた書類がe文書化され、タイムスタンプと電子署名付きでデータベース化されていれば、監査役がチェックできるわけですから。IT化する部分としない部分にしっかりメリハリを付ければ、それほどお金が掛かるものというものでもありません。

 ただ、一番大変なのは、9000フローを書き出すことです。どこでどのデータが移動して……というフローを洗い出して明確にするのはものすごく難しいことです。

 しかし、今まで経験と勘でやってきた仕事を書き出すと、今まで何気なくやってきたことがものすごく重要なポイントだったと分かってきます。自分の業務を徹底的に見直すということは、どの事業者にとってもとても重要なことです。それが、無駄をなくすことにつながり、リスクを回避することにつながってきます。

 これまでは業務段取りというかたちでプロジェクトマネジメントを行ってきたと思いますが、これからは監査や点検、改善という視点を意識して行う必要があります。キヤノンでは業務フローを書き出した結果、業務をまたいで情報が移動したのにそれを確認することができない状態が1万点もあったことが分かったきたのです。

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