多次元データベースの強みを生かして柔軟なIT環境を構築した米医療機関

1994年設立、1100人の従業員を抱えるPartners Healthcare Systemのイーサン・フェナー氏に、Cache導入の理由と効果、問題点などについて聞いた。

» 2005年12月02日 21時31分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 2次元構造のリレーショナルデータベース(RDB)と異なり、多次元構造でデータを格納する多次元データベースとして、インターシステムズが提供する「Cache」が知られている。同製品は、SQL、オブジェクトデータベースアクセス、データ配列への多次元アクセスという3つの方法でデータにアクセスできることが特徴となっている。

 構造上の利点を生かすことによるパフォーマンスの良さや、迅速な開発が可能といったメリットがあり、「RDB後を担うデータベース」という意味を込めて、インターシステムズは「ポストリレーショナルデータベース」として同製品をアピールしている。

 特に、Cacheの導入企業が多いのが医療業界だ。1994年設立、1100人の従業員を抱えるPartners Healthcare Systemのイーサン・フェナー氏に、Cache導入の理由と効果、問題点などについて聞いた。

Partners Healthcare Systemのイーサン・フェナー氏

 Partners Healthcareは、米国で知られる、ブリガム&ウィメンズとマサチューセッツ総合病院の2院によって設立され、管理システムから長期の診療記録まで、多様な医療ITネットワークを提供している。同院には14万人の患者が入院し、外来患者は103万人に上る。フェナー氏は、9000人以上のユーザーを抱える医療データベースプラットフォームの責任者だ。また、同氏は、米国以外の各国で、病院のIT化プロジェクトのコンサルティングを行っているという。

 「Cacheを導入することで、大規模かつパフォーマンスの良い医療ネットワークを構築することができた」と話す同氏。2万7000台のデスクトップPC、800台のサーバ、8200台のプリンタが稼働している。

 Cacheデータベースが基盤となるEMPI(Enterprise Master Patient Index)と呼ばれる情報システムは、同院だけでなく、Faulkner HospitalやNSMCなど、10余りの提携医療機関がデータソースになっており、EAI(エンタープライズアプリケーション統合)システムを介して連携している。Cacheに入力されるデータは日に7万5000件に上り、330万人の患者情報が納められている。

 また、エンドユーザーが実際に利用するインタフェースを含めて、さまざまなアプリケーションが、データサービス層を介してCacheと統合、さらに、患者名を名寄せするアルゴリズムも搭載されている。

 Cacheを導入したことによるアプリケーションサーバ上での具体的な効果として、導入前は40%だったCPU利用率が、導入後は8%に低下、また、データベースの読み込みと書き込みの性能は、導入前の8倍を記録した。

 一方、データベース上における1分当たりに発生するプロセスの競合は、90%も削減されたとしている。

 今後、Cacheに求めるもの、あるいは実装していく上で重視する点として、フェナー氏は、「データ分析の必要性を強く感じる。また、心臓病や糖尿病など、各病名をベースにデータを管理することなどに注力すると話している。

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