Googleを選んだAOL、MSに希望はあるか?

AOLにとってGoogleは最善の選択肢だろう。だがAOLとの取引はGoogleが掲げる「中立」の看板に傷を付けるかもしれない。Microsoftにとってはそこがチャンスだ。(IDG)

» 2005年12月21日 11時16分 公開
[IDG Japan]
IDG

 America Online(AOL)との取引をGoogleに奪われたことはMicrosoftにとって大きな打撃だが、それでも同社にとってはメリットもあるかもしれない。Googleがえこひいきをしていると顧客が考えるかもしれないからだ――アナリストらは12月20日、こう語った。

 AOLがGoogle上でバナー広告を表示する権利を得たことで、Microsoftは自社の検索サービス向けの広告をもっと獲得するかもしれないとアナリストは指摘している。AOLとGoogleの取引は、既存のGoogle顧客との間に摩擦を引き起こす可能性があるからだという。

 Googleは常に自身を「顧客が公平に広告を表示できる場」としてきたとDirections on Microsoftの調査ディレクター、ボブ・ヘルム氏は語る。しかし、AOLがバナー広告を販売し、Googleの検索広告を直接販売する取引を結んだことで、Googleは、今回の件で軽視されたと感じる顧客だけでなく、業界の識者からもさらに批判を受ける可能性が出てきた。「今回の取引で、(検索の)中立的なフロントエンドであるというGoogleの主張は弱まるだろう」とヘルム氏は指摘する。

 Jupiter Researchの上級アナリスト、ジョー・ウィルコックス氏も同意見だ。「今回の取引で、Googleは中立の立場ではなくなりえこひいきをしているように見られるようになる。もしもわたしがMicrosoftなら、検索に関しては中立だという点を強調しようとするだろう」

 全般的に見て、アナリストらはGoogleとの取引はAOLにとって一番うまくいくと述べている。AOLは大金だけでなく、Googleの検索サイトに自社や顧客のバナー広告を表示するという誰もが欲しがっている権利も手に入れる。

 一方、Googleにとっては実入りのいいAOLの広告ビジネス――一部の推定ではGoogleの売上高の12%をもたらしている――を維持することがメリットになるが、それはタダというわけではない。Googleが事実上10億ドルでAOLの今後の忠誠を買うということは、正確にはGoogleにとって有利というわけではないとヘルム氏は指摘する。

 「ある意味、今回の取引は単にGoogleとAOLの契約を拡大するものであり、Googleにとってはこれまでより高くつくことになる」(同氏)

 Microsoftが力を入れて交渉していた取引を逃した――同社はGoogleと同じくらい熱心にAOLを口説いていたと一部では報じられている――ことは、同社が対Google戦略を考え直す推進力になるかもしれないとウィルコックス氏は言う。「Microsoftは再検討せざるを得なくなるだろう」

 Microsoftはこの1年、自社の検索エンジンをGoogleに匹敵するものにしようとしてきたが、まだ各方面でMSN SearchはGoogleにかなわないと考えられている。

 AOLがGoogleと手を組むと決めたということは、同社が「Googleの検索エンジンはAOLポータルがもっと成功するために必要なビジターを引きつける」と考えたということだ。このことはMicrosoftにこの分野で取り組むべき深刻な課題を幾つか残しているとアナリストは言う。

 AOLとの取引を逃したことで、Microsoftは自社のオンライン広告プラットフォーム向けにVerizon CommunicationsやComcastなどのサービス会社からもっと契約を獲得する方向に焦点を向け直そうとするかもしれないとヘルム氏は語る。

 「この戦いの次の段階は、サービス会社(のポータル)に検索広告と検索結果を配信する契約の獲得だ。これは次第に重要になるだろう」(同氏)

 それでもAOLがMicrosoftではなくGoogleを選んだことは、後で戦略的なミスだと判明するかもしれない。AOLのオンラインコンテンツとMicrosoftの技術を合わせれば、長期的にAOL-Google連合よりも実入りのいいビジネスになったかもしれないとウィルコックス氏は話す。

 「AOLには優れたコンテンツがあり、コンテンツ編成のノウハウがある。Microsoftには優れた技術があり、コンテンツ配信のノウハウがある。これを合わせれば、強力なオンラインサービスになる可能性がある。AOLは大きなチャンスを逃したのかもしれない」(同氏)

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