OOoから見るオープンソース普及のカギは何か?月刊「OpenOffice.orgコミュニティ通信」――12月号(2/2 ページ)

» 2005年12月28日 09時44分 公開
[可知豊,ITmedia]
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広がる学校教育現場における実証実験

 バージョン2.0のリリースによって、OpenOffice.orgは普及期に入ったといえる。

 しかし、大半のユーザーがMicrosoft Officeを使っている現状では、OpenOffice.orgへの移行が大々的に始まっているというわけでもない。実用的かどうかを判断するだけでも、企業ではかなりの時間と手間、プロセスを要するからだ。そのような背景でも、各地でOpenOffice.orgを含むOSSデスクトップの実証実験が始まっている。

 2004年度、IPAによって行われた「学校教育現場におけるオープンソースソフトウェア活用に向けての実証実験」(関連記事)では、興味深い成果が公開されている。実証実験のために開発されたソフトウェアやドキュメントも含まれているのだ。

 2005年度は、文部科学省と経済産業省が共管する財団法人コンピュータ教育開発センター(CEC)が、3つの地域で学校教育現場向けの実証実験「Open School Platform」プロジェクトを行う(関連リンク)。対象地域は、2004年度に引き続き、岐阜市およびつくば市(関連リンク)、岡山県総社市(関連リンク)、京都府京田辺市となっている。最初の2つの地域ではすでにプロジェクトサイトが公開されている状況だ。

 いずれのプロジェクトも、OSSデスクトップの活用が含まれているため、OpenOffice.orgやStarSuiteが活躍することになりそうだ。

自治体における実証実験、沖縄県浦添市の場合

 IPAは、学校以外の事例として、「自治体におけるオープンソースソフトウェア活用に向けての導入実証」を始めた(関連リンク)

 対象となるのは、北海道札幌市、栃木県二宮町、大分県津久見市、沖縄県浦添市の4つの自治体。この実証実験は、OSSデスクトップを実際の業務に導入しており、必要な機能の洗い出し、効率的な運用方法、実際的な移行方法、現実的なサポート体制の確立を目指している。

 先日、筆者は浦添市企画部情報政策課の上原豊彦課長と上間泰治氏に会見することができた。浦添市では、2004年からStarSuite 7(OpenOffice.org 1.1に相当)を導入した経緯があり、実証実験では住民記録や税関連等の基幹業務システムを多様な端末構成で利用している。

 すでに導入されているStarSuite 7については「端的に表現すると、評判が悪いです」(上間氏)

 これは、Microsoft Officeとの互換性が十分でないこと、独特な操作性を持っていることが理由だと語っていた。ただし、「2年程度経つと、新しいツールで十分に書類を編集できるようになる。このため、その段階まで根気強く使い続ければクレームもないでしょう」(上原課長)

 また、「StarSuite 7からOpenOffice.org 2.0に移行すればライセンス料は必要ない」ということもあり、OpenOffice.org 2.0の評価を進めていると聞く。「バージョン 2.0はMicrosoft Officeとの互換性が高くなっているため、このレベルであればかなり初期の段階でもクレームが少なくなるでしょう」(上間氏)

 自治体でOSSデスクトップとOpenOffice.orgを使用する場合の課題として、次の点を挙げている。

  • 罫線機能に不満(自治体では罫線表を多用する)
  • 読み込み時の変換精度(一太郎からWordへの移行時は変換精度が高かった)
  • Excelマクロの互換性(庁内では使わないが、県から送られてくることがある)
  • Linuxデスクトップのプリンタドライバ(業務用プリンタで未サポート)

 「将来、当市で作成した文書テンプレートなどを他の自治体でも使ってもらえるよう公開できたらいい」(上原課長)

OpenOffice.org普及のカギは何か

 このほかに、企業での導入実験として、NTTコムウェアでNTTグループを対象としたLinuxデスクトップの導入実験が始まろうとしている。

 OpenOffice.orgの利点として、前述したようにフリーであること、Microsoft Officeとの互換性が挙げられる。フリーであることは、導入と維持コストを下げる効果があるが、OpenOffice.orgのためのユーザー教育、導入/運営支援体制を作ることにはまだ課題があるといえる。

 Microsoft Officeとの互換性は、常に話題に挙がるものだ。しかし100%互換ではない。Microsoft Office自体がバージョンごとに完全な互換性を維持していないため、特定バージョンに合わせた互換性確保は意味を持たないというのが一つの見解といえる。OpenOffice.orgを導入するためには、利用者がMicrosoft Officeでどの機能を使っているのか再評価する必要があると考えられるのだ。

 このような課題を補うことになるのが、オープンソースであること、OpenDocumentによるオープンスタンダードという2つの特徴だ。大きな組織がトップダウンで導入する場合には、この点が高く評価されるだろう。実証実験では、サポート体制を構築するリソースにもフォーカスされるだろう。Microsoft Offieでどのような機能を使っているか? その実態を評価することは、自らがMicrosoft Officeをこれまでどのように使ってきたかを考えることができ、見極めることができるキッカケになると筆者は考えている。

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