HPのアウトソーシング大手CSC買収、そのメリットとデメリットは?(1/2 ページ)

収益性が鈍化するアウトソーシング業界が再編に向かう中、サービス事業拡大を狙うHPが大手のCSC買収に乗り出したと報じられた。業界観測筋は、そのメリットとデメリットをどう見る?

» 2006年01月10日 08時42分 公開
[Jeffrey Burt,eWEEK]
eWEEK

 Hewlett-Packardが、Computer Sciences Corporation(CSC)の買収に意欲を見せていると報じられた。業界の観測筋は、これをメリットとデメリットの双方をもたらすものとみている。

 HP(カリフォルニア州パロアルト)がCSC(カリフォルニア州エルセガンド)を取得すれば、サービスおよびアウトソーシング事業の規模を手っ取り早く拡大させることができ、IBM Global Services(IGS)などにも対抗していけるようになる、と専門家は話している。しかし、事が誤った方向に進んだ場合は、経営状態の改善に取り組む企業に負担がかかる恐れがあるという。

 HPがCSCを買収する可能性について初めて報道したのは、Wall Street Journal紙である。同紙は米国時間1月5日、HPが非公開投資会社であるBlackstone Groupとタッグを組んでいるとする記事を掲載した。Blackstoneは、今回の交渉以前にCSCの取得をもくろんだ複数の企業を支援している。これらの企業にはMartin CorpやTexas Pacific Groupなどが含まれており、2005年秋に120億ドルという買収額を打診したという。HPおよびBlackstoneがCSCに現在提示している金額は、明らかになっていない。

 この件に関してHPの広報担当ロバート・シャービン氏にコメントを求めたものの、回答は得られなかった。

CSC買収はサービス事業拡大に寄与

 CSCを買収することで、HPのサービス事業部門はより大規模な企業を対象とすることが可能になり、収益が大幅に増加すると考えられる。Credit Suisse First Bostonの見積もりでは、IGSの2005年度の売り上げは480億ドルに達しているという。HPの同年会計年度は8月31日に締められたが、こちらの収入は155億ドルで、一方のCSCは140億ドルの収益があった。同社の会計年度は4月に終了する。

 Forrester Research(マサチューセッツ州ケンブリッジ)のアナリスト、ジュリー・ギーラ氏は、HPがCSCを取得すれば、アウトソーシング事業がハードウェア製品事業の規模を上回る可能性が出てくると話している。HPのテクノロジーソリューション部門で副社長を務めるアン・リバモア氏によると、同社がサービス事業の拡大を志したのは18カ月前のことだという。HPでは、同部門がサービス事業を運営している。

 今日のHPは専門知識や実績のある技術を欠いているが、CSCを買収することでそうした部分が補われ、IBMなどのベンダーのハードウェアを利用するデータセンターをも対象にした、大型のアウトソーシング契約を獲得していけるようになると、ギーラ氏は話している。

 また、買収によってアウトソーシング事業に携わる人材を確保することができ、これが大規模な契約の締結につながるとも考えられている。HPは、Procter & Gamble(オハイオ州シンシナティ)と30億円規模の10年契約を結ぶなど、すでに大型のアウトソーシング契約を多数獲得しているが、こうした状態を維持するには、潤沢な資本と人材が必須となる。

 「大型契約は、チャンスであるとともに負担でもある。大規模な契約を獲得すればHPの信用は増すが、ほかの大型契約を取りに行くのは難しくなるのだ」(ギーラ氏)

 さらにギーラ氏は、CSCを取得できれば、特定の地域・地方におけるHPの存在感が増すと指摘している。同社のサービス事業は、ヨーロッパの各地域ではすでによく知られているが、アジアおよびオーストラリアでは認知度が低い。一方CSCは、各国の政府を相手に幅広いビジネスを営んでおり、金融業界にも顧客を抱えている。

 アウトソーシングは、IT産業の中でも競争が激化している分野だ。HPに同分野で戦いを続けるつもりがあるならば、CSCが獲得しているような契約が是が非でも必要になる。折しもHPのハードウェア事業は、Dellなどの低価格製品を提供する企業や、IGSおよびElectronic Data Systems(EDS)といった巨大企業に売り上げを奪われつつある。また、インドのアウトソーシング業者が市場に参入し、IT産業界に新風を吹き込んでいる、とギーラ氏は述べている。

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