暗黙知の断絶こそが2007年問題の正体構造改革としての2007年問題(1/2 ページ)

「2007年問題を論ずると、“暗黙知の断絶”という命題に行き着く」と語るのはみずほ情報総研の川添祥宏氏だ。マニュアルに書ききれない仕事の進め方などの業務運用、過去トラブルの経験や対処方法などもそれに当たる。

» 2006年01月10日 09時15分 公開
[メディアセレクト]

「ITセレクト2.0」 2006年1月号 から転載

変化の波にさらされていない企業が危ない

 「2007年問題を論ずると、“暗黙知の断絶”という命題に行き着く」と語るのは、みずほ情報総研の川添祥宏氏だ。暗黙知というものが必ずしも属人的に備わっているだけのものとは限らず、過去組織に蓄積されたさまざまなノウハウや、取り組んできた背景、いきさつそのものと断言する。その二つの“財産”が途切れてしまうのが2007年問題の本質だと考えている。

 「企業情報システムの観点から見れば、ユーザー部門、情報システム部門、ベンダーの三者それぞれにノウハウや背景、いきさつを持ち、それぞれに断絶の懸念を持っています。そのフレームワークで見るのが最もわかりやすい」と川添氏は言う。

みずほ情報総研システムコンサルティング部次長 川添祥宏 氏。システムアナリスト。ITコーディネーター。民間企業、公共機関などのクライアントに向けて、主にシステム化計画立案やシステム調達、導入などのコンサルティングサービスを提供。近年はEA(エンタープライズアーキテクチャ)を適用した案件にも対応している

 まず、ユーザー部門にとってのノウハウとは、マニュアルに書ききれない仕事の進め方などの業務運用、過去トラブルの経験や対処方法などがある。また、情報システム部門にとっては、現場の仕事内容やシステムの状況のほか、プロジェクトマネジメントのノウハウ、COBOLやアセンブラなどの技術的なノウハウも含まれる。

 「出入りの業者との過去の貸し借りなどもノウハウに入れてもいいでしょう。それはベンダーも同様です」と川添氏。つまり、なぜ業務と情報システムが現在の形になっているか、それを説明するためのノウハウの集積と過去のいきさつの集積が暗黙知だというのだ。

本当はどんな企業が危ないのか?

 ユーザー部門によっては、仕事の仕方が長年変わっていない業務もあれば、コロコロと変わる業務もある。変わっていれば、暗黙知も更新されて変わっているはずで、その世界には2007年問題は存在しない。システム部門でも、ダウンサイジング、Windowsの変遷、ERP導入、2000年問題などを節目にITが変わっていったならば、過去を引きずる暗黙知の必要性も薄まっているため、仮に問題は起こっても軽微で済むだろうという。

 「心配なのは、これらの波に当たっていない部分。つまり、環境変化の少ない業種にあって、比較的大規模でシステムを自前で持つ企業が、今後問題を表面化させる可能性がありそうです」と川添氏は警告する。

 例えば重厚長大などと呼ばれる歴史のある産業や、システム子会社として本体から分離された企業では、要員の高齢化が進みやすく技術変化も受けにくい。また、口伝の世界が必要とされていて、かつ、その企業文化が脈々と受け継がれている会社も要注意だという。そこでは、定年を延長したり嘱託や在宅で再雇用したりといった対策をとる企業も多い。

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