ブラウザだけでオフィススイートを利用できるようにしようというAjaxオフィスでも、OpenDocumentファイルへの対応が始まっている。AjaxによるWebベースのワープロWritelyは、すでにWordファイルやOpenDocumentファイルに対応している。WordやOpenOffice.orgで作成したファイルをアップロードしたり、Writelyで作成した文書をWordファイルやOpenDocumentファイルとしてダウンロードできるという。
Googleが提供している、大容量のネットワークストレージを持つWebメールサービス「Gmail」もOpenDocumentファイルに対応した。Gmailは、ブラウザとインターネット接続環境があれば、どこでもメールを確認できるが、添付ファイルは、いちいちダウンロードして表示する必要がある。
そこで、GmailはWordファイルやOpenOfficファイルなどの幾つかのファイル形式に対応した。WordやPDF/OpenDocumentのファイルが添付されたメールを受け取った場合、いちいちファイルをダウンロードしなくても、HTML化してブラウザで閲覧することができる。Wordを持っていなくても、内容を確認できることになるわけだ。ただし、現状ではODFではなくSXWやSXCなど一つ前のバージョンの拡張子になっている(関連リンク)。
これは、GmailのサーバにOpenOffice.orgを組み込むことで実現していると、筆者は想像している。OpenDocumentファイルだけでなくWordファイルにも対応したOpenOffice.orgを利用し、サーバサイドのOpenOffice.orgでHTMLへと変換しているのではないだろうか。
これまでのOpenOffice.orgは、無料で使えるMicrosoft Office互換ツールとして評価されてきた。「なんだ。OpenOffice.orgでも、できるじゃないか」という感じだろうか。これは、Microsoft Officeにできることしか、実現できないことを意味する。
しかし、OpenOffice.orgの可能性はそれだけではない。
現在、クライアント/サーバーを問わず多くのツールが、OpenOffice.orgを組み込み始めている。これが可能なのは、OpenOffice.orgがオープンソースソフトウェアだからだ。自由な複製/配布/改良が事前に許可されているからこそ、文書処理エンジンという素材としてOpenOffice.orgが使われていく。そのために必要な技術はすべて公開されている(関連リンク:StarSuite8 SDK日本語版)。Perlや.NET/Java/Python/RubyなどからOpenDocumentファイルを扱うためのフレームワークやライブラリ/サンプルコードも登場しているのだ(関連リンク)。
このような組み込みオフィススイートは、Microsoft Officeでは実現が難しいだろう。
「OpenOffice.orgだからこそできる」そのような利用形態が登場した時、OpenOffice.orgは本当の普及が始まるだろう。それを作り出すのは、読者かもしれない。
さて、OpenOffice.orgやオープンソースには直接は関係ない話だが、せっかくの新年なので、統合オフィスソフトをどう役立てるかというテーマを取り上げてみたい。
OpenOffice.orgに関する英語のレビューなどを読んでいると、統合オフィススイートを"Office Productivity Suite"と記述している場合がある。日本語に訳された記事では、「オフィス生産性スイート」となっている。
"生産性"(Productivity)は、元々経済学の用語で、「資源から付加価値を生み出す際の効率の程度のこと」(関連リンク:Wikipedia)。例えば、手作業では1日100本しか作れないけれど、ベルトコンベアを利用すれば1万本作ることができるという場合、生産性は100倍という換算になる。
ワープロや表計算ツールなどのオフィス生産性スイートは、オフィスワーカーの生産性を向上させるツールだ。Microsoft Officeや一太郎オフィス、一昔前のワープロ専用機を導入したことによって、文書作成の作業時間が短縮し、その分利益へと結びついているはずだ。これは、本当だろうか? 確かに手書きやソロバンを叩くのに比べれば、書類を作ることや計算自体も早くなった。しかし、その分、試行錯誤の回数が増えたり、書類の見栄えを良くしたりという作業が増えているのも事実だ。
書類の見栄えはよくなったが、それにかかる時間は変わっていない。オフィスワーカーの場合は、作った書類や見積書をウリとしているわけではない。仕事の効率は上がったけれど、生産性も利益も上がっていないではないか? という疑問が浮上することになる。
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