スキャンした紙文書に改ざんはないといえる?e文書法の活用術(2/4 ページ)

» 2006年01月17日 08時50分 公開
[佐藤慶浩,ITmedia]

見読性

 e文書法が対象とする文書には、2種類の電子文書がある。1つは紙の文書をスキャナで取り込んで電子化したもので、もう1つは、コンピュータなどによって生成される電子ファイルそのものである。後者には、ワードプロセッサや表計算ソフトで個別に人によって生成されるものと、アプリケーションソフトによって自動的に生成されるものの両方がある。見読性について報告書は、この2種類の電子文書を区別して要件を示している。

 後者のコンピュータによって生成される電子ファイルについては、日本語文字コードなどに注意して文字化けが起こらないようにしなければならないということであり、補足をする必要はない。しかし、前者のスキャナで取り込んだ電子文書の要件には注意が必要だろう。

 スキャンして作成する電子文書の見読性には、2つの観点がある。1つは、スキャンしたものをコンピュータ上で表示したり、印刷したりした場合に、元の紙文書に書いてあった必要な情報が読めるようにしなければならないという点だ。「後から見たときに、何が書いてあるのか分からないような荒い解像度でスキャンしたのでは困る」という当然のことである。適切な解像度は、実際に用いる紙文書をスキャンしてスキャンの条件を適宜変えながら試してみれば誰にでも十分条件を見つけることができる。

 ただ問題となってくるのは、もう一方の観点である「元の紙文書に改ざんがなかったかを後から検証できる程度に鮮明にスキャンしなければならない」という点だ。

スキャンされた文書が改ざんされていないことが保証できるか

 文書の改ざんが問題となるような文書については、報告書で、紙文書の状態で改ざんされた場合の改ざん痕が分かる程度の色数(報告書では階調)や、解像度でスキャンすることが求められている。例えば、紙文書に手書きで書かれた数字が改ざんされていないかを想像してみよう。いろいろなやり方が考えられるが、余分な数字を書き加えられていないかを判定するには、筆跡の違いが分かる程度の解像度が必要だ。場合によっては、使用されたインクの色の違いが分かる程度の色数を再現する必要がある。また、修正液で消したり、その上に別の数字を書かれていたりしないかを判定するには、使用している紙文書の紙色に対して修正液の色の違いが分かる程度に、色数と解像度が求められることになる。

改変の例
改変前:\123,456-
改変後:\428,496-
上表のでは、(1)「1」に「<」のような書き加えをして「4」に改変、(2)「3」に「ε」のような書き加えをして「8」に改変、(3)「5」を修正液で消した上に文字を新しく書いて「9」に改変している
上記の改変の有無を、スキャンした画像から判定できるかを確認するために、改変した紙面のスキャン要件をさまざまに変更した
改変した紙面のスキャン画像の例
解像度:150dpi
モノクロ2値
モノクロ中間調
カラー24bit
解像度:75dpi
モノクロ2値
モノクロ中間調
カラー24bit
解像度:50dpi 解像度:25dpi
モノクロ2値
モノクロ2値
モノクロ中間調
モノクロ中間調
カラー24bit
カラー24bit

 

 報告書が参考として示している色数や解像度(モノクロ2値200dpi/モノクロ中間調150dpi/カラー24bit 150dpi)は、これらの改ざん痕を知るためには明らかに不十分といえる。逆に言うと、改ざんの有無を確認する必要があるような文書については、個別により厳しい条件が示されると考えるか、スキャンした元の紙文書を保管しておく必要が出てくる。

 このような文書を電子化する場合には、報告書が記載している必要条件だけでなく、十分条件が役所から示されるまで原本を保管しておくのが確実だろう。だが、スキャンして電子化する文書を改ざんした見本を作成して、条件を変えながらスキャンし、改ざん痕を確認できる程度まで、色数と解像度を上げる試行を行えば、ある程度は自分で十分条件を探ることはできるかもしれない。ただ、これは実際に改ざんをしたことがない普通の人にとっては、実はやっかいだ。なぜなら、改ざん方法を知らなければ、どのような見本文書をスキャンして試してみればよいのか分からないからだ。

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