「ビジネスウェブ」で新たな可能性を追求するセールスフォースInterview(1/2 ページ)

「ビジネスウェブ」というコンセプトで新たなビジネス展開を図る米Salesforceの共同創業者でテクノロジー統括責任者のパーカー・ハリス氏に話を聞いた。

» 2006年02月01日 19時22分 公開
[聞き手:谷川耕一,ITmedia]

 セールスフォース・ドットコムが最新版の「Winter'06」と、オンデマンドアプリケーションのプラットフォーム「AppExchange」を発表した。発表会では、米Salesforceの共同創業者でテクノロジー統括責任者のパーカー・ハリス氏がキーノートに登壇し、Web上でのオンデマンドビジネスを確立する取り組みとして、「ビジネスウェブ」という新たなコンセプトを紹介した。

米Salesforceの共同創業者でテクノロジー統括責任者のパーカー・ハリス氏

 ビジネスウェブは、コンシューマー向けサイトとして成功しているeBay、Yahoo!、Amazon.com、iTunes Music Storeなどの新しいサービスモデルを、エンタープライズのビジネスで実現しようとするものだ。

 そのためのプラットフォームがAppExchangeとなる。これは、インターネット上で、salesforce.comだけでなく、パートナーや顧客企業が開発したアプリケーションも共有し、利用できる仕組みを構築する。それぞれが作成した小さなコンポーネントを連携させることで、新たに洗練されたソリューションを作り上げ、これを「ソーシャルプロダクト」と呼ばれる製品として展開する考えだ。

 パーカー・ハリス氏に、ビジネスウェブという新たな戦略について話を聞いた。

Winter'06のポイント

ITmedia 発表されたWinter'06およびAppExchangeの位置付けを教えてください。

ハリス AppExchangeがWinter'06の心臓部と言えます。2005年9月にAppExchangeを発表しましたが、実際には、アプリケーションをダウンロードして使える状況にはありませんでした。今回、Winter'06の発表のタイミングで、多くのAppExchangeアプリケーションがダウンロードして使えるようになったことがポイントです。

ITmedia Winter'06の強化点は何ですか?

ハリス CRMアプリケーションを強化した点です。顧客の期待も大きい分野と言えます。具体的には、テリトリ管理や売り上げ予測の強化などの拡張を行いました。今後もカスタマイズ機能やビジネスロジック、CRMのカレンダやオーダーエントリなど、たくさんの機能の拡張を行っていきます。

ITmedia ここ最近IT市場で話題になっているCPMやBIなどの機能についてどのように対応していますか。

ハリス 分析に関する機能強化に向けて、社内に専任の部隊を設けています。これは、今後も注力していく分野です。ただし、この分野に関してはわれわれだけでなく、パートナーである日本ビジネスオブジェクツなどにも協力してもらいます。

ITmedia CRMアプリケーションサービスプロバイダーから、プラットフォームであるビジネスウェブという新たな世界に足を踏み込もうとしています。顧客企業が抱く期待感に何か変化はありますか。

ハリス プラットフォーム戦略を成功させるためには、キラーアプリケーションが必要です。SalesforceにとってCRMがキラーアプリケーションです。キラーアプリケーションとプラットフォームの両方がなければビジネスウェブでの成功はありません。これはマイクロソフトで言えば、Windowsに対するOfficeの存在と同じです。

ITmedia マイクロソフトもオンデマンドビジネスの領域に進出しようとしています。

ハリス マイクロソフトはMSNをベースにしたアプローチで、むしろGoogleの方向に向かっています。戦略もアプローチも異なるのです。マイクロソフトはビジネスアプリケーションの世界では、いまだにソフトウェア製品を提供しているだけに過ぎません。WindowsにしてもOfficeにしても、Webベースではありません。ビジネスウェブでは、デスクトップではなくインターネットがプラットフォームになっている必要があると考えています。

ITmedia 従来のシステム開発は、巨大なソフトウェアを自ら構築するか、購入するか、あるいは画一的なパッケージを導入するといった方法で行われてきました。その方法における成功者であるOracleも、今後オンデマンドの世界に注力してくることが予測されます。

ハリス Oracleのラリー・エリソン氏は、Salesforce.comに注目していて、今後この分野で競合していこうと考えているでしょう。買収によってSiebel On Demandを手に入れたとはいえ、Oracleはまだしばらくの間、買収で手にした異なるテクノロジー製品を統合する作業に注力しなくてはなりません。

 彼らはパッケージ、オンデマンドをはじめ、多くの製品ラインを持っています。そのため、顧客からは、「どれを選んでいいか分からない」といった声も聞こえてきます。つまり、Oracleには販売面、技術面の両方に混乱があるのです。

 一方で、OracleやSAPがオンデマンドの世界に入ってくることで、オンデマンドの市場自体が活性化し、将来的には彼らと競争しながら、一緒に成功していけると考えているのも事実です。

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