テレビ会議で実現する「現場感覚」の新たな形コンタクトセンターが企業の顔になる(1/2 ページ)

電話やFAXなどコンタクトセンターで活用する既存のチャネルではコミュニケーションにどうしても限界がある。「会って話す」という最も優れたコミュニケーションを遠隔地からでもバーチャルに実現できるのがテレビ会議システムかもしれない。

» 2006年02月09日 08時33分 公開
[怒賀新也,ITmedia]

 オンラインムック「コンタクトセンターが企業の顔になる」

 「電話では資料がなくて話がまとまらない」「電子メールでニュアンスを伝えるのは困難」というわけで、一般に、企業における打ち合わせの現場では、全員が物理的に同じ場所にいなければ話が進まないと考えられていることが多い。

 企業において話し合いで何かを決定する際には、複数の利害関係者の微妙なニュアンスが入り交じることもあり、物理的に現場にいないとやりづらいのは確かだ。しかし、意思決定をする際に、すべての担当者を常に同じ場所に集めることは難しい。「○○さんが帰ってから会議」では、どうしても間に合わないケースもあるだろう。

 コミュニケーションにおけるそういった微妙な壁を取り払うための解決策として、現在注目されているのが「テレビ会議システム」である。これまでも同じ理由でテレビ会議システムに焦点が当てられてきたものの、コマ落ちしたり、音声が途切れたり、画面が不鮮明だったりといった理由で、会議のメンバー間で「現場感覚」をバーチャルに共有することは難しかったのが実情といえる。テレビ会議が今一歩普及していない原因の1つには、使い勝手の悪さがあるといえる。

 つまり、テレビ会議システムの要件は、「つながればいい」のではなく、「高い通信品質で現場感覚を再現できるか」にあるといえよう。逆にいえば、大画面のテレビを通じて、鮮明かつ音質の高い環境で話ができるのならば、テレビ会議によって、企業は本当の意味で物理的距離を克服することができるのである。

 そんな中で、現在、高い通話品質を実現するビジネス向けのテレビ会議システムを提供しているのが、ノルウェーに本拠を置くタンバーグや米国のポリコムである。一般に、ハードウェア型、ソフトウェア型、ASP型など、テレビ会議には幾つかの提供形態がある中で、ハイエンドとして位置付けられるハードウェア型ソリューションの提供ベンダーとして、両社が中心に挙げられる。

テレビ会議(タンバーグ)では香港(左)と日本(右)間でも、画像、音声ともに物理的な距離を感じさせない。右上には通信内容を暗号化していることを示す「鍵」のマークが見える

 テレビ会議によって、コミュニケーションの中で最も効率的な方法である「実際に会う」に、できるだけ近い環境を提供することが、こうしたベンダーの目標だ。そして、コンタクトセンターもテレビ会議システムをベースに構築すれば、より質の高いコミュニケーションを実現できるかもしれない。

銀行のカスタマーセンターとして導入

 すでに、テレビ会議システムをコンタクトセンターの仕組みに導入した大手銀行があるという。同銀行では、海外の支店でも国内と同じサービスレベルを顧客に提供することを目指し、タンバーグのテレビ会議システムを導入した。通信はIPベースであるため、インターネットにつながっていれば、ユーザーは世界のどこからでも、日本のコンタクトセンターの担当者とテレビ会議を通じたフェースツーフェースのコミュニケーションを行うことができる。

 そのほかにも、遠隔医療や法律相談、社員研修、離島の島民への遠隔教育など、さまざま利用シナリオを想定することができる。

 2002年に国内で約80億円程度だったテレビ会議システム市場は、2010年には約660億円にまで拡大することが見込まれており(ハードウェア、ソフトウェア、ASPサービスのすべてを含む)、今後、幅広い応用範囲での活用が予想される。

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