この電話、大連につながっているの?コンタクトセンターが企業の顔になる

コンタクトセンターの在り方を考える3回目。現在、IPの特性に注目し、海外にコンタクトセンターを構築する例が増えている。特に多いのが中国の大連だ。

» 2006年02月17日 08時00分 公開
[土屋晴仁,ITmedia]

 オンラインムック「コンタクトセンターが企業の顔になる」1回目2回目に続き、利用者の視点からコンタクトセンターの在り方を探る。

土屋晴仁(編集者/ジャーナリスト)

 一般の人にとって最も身近なコンタクトセンター(CC)といえば、NTTの「104」サービス(電話番号案内)だろう。いつ電話を掛けてもオペレーターの女性が丁寧に応対してくれる。それで調子に乗ってイタズラ電話をしまくる困った奴もいるが、とにかく便利で大したサービスである。

 この電話を一体どこで受けているのかについては、いろんな「風説」がある。いわく「東京からの104は金沢で受けている」「いや、沖縄だ」などなど。

CCアウトソーシングの大潮流

 実際には、全国90カ所以上の拠点に振り分けられるという。その中で、首都圏以外の拠点で受けるのは全体(1日約30万件)の約半分(沖縄のCCは全体の1割)らしい。調べて驚いたことは、1985年には約3万人の社員で対応していたのが、1998年には1万1500人になり、それもすべて下請け会社のパートタイマーだということ。

 CCは人が対応するのが基本だから、どうしても人件費がかさむ。それに席数に応じたスペースの確保に掛かる費用やPCなどの機材費、オペレーターの教育費などのコストを負担しなくてはならない。運営主体が「これ以上コストを掛けたくない」と思うのも当然だ。そこへ名乗りを上げたのが、「CC業務引き受けます」という下請け業者だ。この業者には地方自治体も含まれる。運営主体と下請け業者の利害が一致したことから、「CCアウトソーシング、地方分散」ブームが一気に加速したのだ。ちなみに、沖縄の場合は県を挙げて取り組んだ。

 こうして始まったCCアウトソーシングの大潮流は、2004年には市場規模にして4671億円となり、2005年には約5092億円に膨らんだ(広義のCRM市場としての統計)。

 市場の上位を占める5社は、ベルシステム24、トランスコスモス、もしもしホットライン、NTTソルコ、テレマーケティングジャパンであり、全体の56%を占める。(リックテレコム刊「コールセンター白書2005」)

 これらの大手企業は、地方自治体のコールセンター誘致および支援制度を利用して、助成金や促進費などを受けながら地方展開を進めている。例えば宮崎県は、用地取得、造成から始まって、各種投資に対する減税措置や賃借料援助、雇用助成、研修支援などがある。

 その宮崎県にCCを置いている企業としては、トランスコスモス・シーアールエム、スカイネットコミュニケーションズ、ハウコム、NTTマーケティングアクト南九州、ロム、サンライズテレコム、フェニックスシステム研究所などがある。

中国東北部へ進出する先進企業

 しかし、国内企業よりもさらに有利なアウトソーサーといえば、やはり中国の企業だ。中でも、東北部の各州に拠点を構える企業は特に優位性を持っている。

 だが、こうしたオフショア(海外)アウトソーシングの泣き所は、やはり、言語の壁があることだ。日本的なあいまいな言い回しが現地のオペレーターには通じない。

 例えば、コンタクトセンターのエージェントが見込み客の日本人にアポイントを取りたい旨の電話を掛けると、「いいですよ」という返答をもらうケースがある。許諾の「いい」なのか、断りの「結構です」なのかのニュアンスが伝わらず、営業担当者が訪ねてみると、先方が「断ったはずだ」と立腹していた、という類のエピソードはたくさんある。

 CCのオフショアアウトソーシングは、今やIP網の普及によって、技術的な障壁はほとんどなくなっている。国内自治体によるCC誘致合戦はもう飽和状態であるともいわれる(あとは時給700円程度の離島しかない)。この傾向はこの先5年以内に、アウトソースの受託先企業が世界で最も多いといわれるインドにも及ぶだろう。それに連れて、コンタクトセンターにおけるコミュニケーションはますます難しくなることが予想される。

 次回は、経営側から見たCCの採算性について考えてみたいと思う。

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