HPストレージのユーザー企業の1社、中華電力は、複雑化するストレージインフラの統合を進めている企業だ。「テクニカルな面では容易だった」と同社の担当者は統合戦略を振り返る。ストレージ統合はコスト削減だけでなく、企業に俊敏性ももたらすとHPはアピールする。
Hewlett-Packard(HP)は2月21日、マレーシアのサバ州・コタキナバルにアジア太平洋地域の顧客やパートナーを集め、「StorageWorks.06」カンファレンスを開催した。とどまることを知らないデータの増加は、ストレージインフラを複雑化させ、常に企業ITインフラにおける課題の1つであり続けている。特に急速な発展を遂げているアジア企業は、ビジネスの拡大に伴って、ストレージインフラが複雑化しやすい傾向にあるという。HPは、ストレージのコンソリデーション(統合)による、コスト削減とビジネスのアジリティ(俊敏さ)を手に入れる必要があると説明する。(関連記事)
アジアを中心に電力ビジネスを行う中華電力(CLP Power)は、複雑化したストレージ環境の簡素化を目指し、コンソリデーションに取り組んでいる企業の1つだ。香港に拠点を置くCLP Power Hong Kongのテクノロジー&アーキテクチャー・マネジャーのアンドレ・ブルームバーグ氏は基調講演で、同社が推進しているストレージコンソリデーションの事例を紹介した。
CLP Powerは、インドや台湾、オーストラリアなどアジアを中心に電力プラントを運用する電力会社。ビジネスを支えるITインフラとしては、香港にある2つのデータセンターを中心に、50カ所の拠点で合計600台以上のサーバが稼働しているという。ネットワークストレージのアーリーアダプターだと話す同社は、早くからサーバとストレージが1対1で結び付くDAS(Direct Attached Storage)環境からFC SAN(Fiber Channel Storage Area Network)へ移行を進めてきた。しかし、同社にとってもデータの増加とビジネスの成長はストレージアレイの数を増やし、多くのSANアイランドを生みだした。2002年には256ポートだったSANポートの数は、2005年には736ポートと3倍にまでストレージネットワークは複雑化していたという。
「当社はリライアビリティ(信頼性)が求められる電力インフラ企業。IT環境にも当然のようにリライアビリティが求められる。コンソリデーションによってメンテナンスコストの削減だけでなく、信頼性や柔軟性の向上も目指した」とブルームバーグ氏。
CLP Powerは、データセンターのディスクアレイを統合するだけでなく、SANファブリック、バックアップ環境の統合も図り、「HP StorageWorks Enterprise Virtual Array(EVA)」によるリソースの共有、SANコアスイッチのリプレイスメントによる段階的なSAN環境の統合、仮想テープライブラリ装置「HP Storage VLS(Virtual Library System)」の活用によるバックアップの一元化など、包括的にストレージインフラの簡素化に取り組んだという。同時に、このコンソリデーションプロジェクトでは、将来に備え、4ギガビットのファイバチャネル(FC)にも対応できるインフラへと移行している。
「コンソリデーションは技術が成熟してきており、テクニカル面では比較的容易だったという印象だ」とブルームバーグ氏は話す。むしろ、部門により異なるリプレイスメントサイクルや課題に対するプライオリティの違いが問題になることが多かったという。今後、4ギガビットFCへ移行を進めるほか、データアーカイビングなどの技術を取り入れていく計画だとした。
ブルームバーグ氏に続いて講演したGartner Asia Pacificのリサーチ担当副社長のフィリップ・サージェント氏によると、ITコンソリデーションの課題の多くはプランニングの段階にあるという。
特に、複数のベンダーによるヘテロジニアスなストレージ環境を統合し、運用管理の効率性を高めることはコスト削減という大きな利点をもたらし、インフラのユーティライゼーションを加速させる。だだ、コンソリデーションに失敗する企業の35%はプランニングでつまずいていると指摘。「コンソリデーションには、さまざまなステージがある。統合により求めるコスト削減のメジャーメントなどを最初に明確にしておく必要がある」とアドバイスした。
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