早稲田と筑波大、エルミックがマイクロカーネル上に仮想化したLinuxとITRONを実装へ

早稲田大学理工学部中島研究室と筑波大学大学院追川研究室、エルミック・ウェスコムは、組み込みシステムのセキュリティと信頼性の強化を実現する新しいOSアーキテクチャの開発に共同で着手すると発表した。

» 2006年03月13日 16時00分 公開
[ITmedia]

 早稲田大学理工学部中島研究室と筑波大学大学院追川研究室、エルミック・ウェスコムは3月13日、組み込みシステムのセキュリティと信頼性の強化を実現する新しいOSアーキテクチャの開発に共同で着手すると発表した。

 同プロジェクトで開発するアーキテクチャは、マイクロカーネル上に仮想化したLinuxとITRONを実装するもの。完成すれば、同OSをベースに開発した製品の品質強化と同時に、開発工数の短縮のメリットも得られるとしている。

 同プロジェクトでは、3者が協力して仕様の策定を行い、プログラムの実開発はエルミック・ウェスコムが行う。プロジェクトの終了は2007年3月を予定しており、終了後には成果物であるプログラムのソースコードを公開し、オープンソースソフトウエアとしての幅広い普及を目指すとしている。

 昨今、組み込み機器においては、オープンなネットワークへの接続や高機能化、用途の多様化の進行によるシステムの複雑化に伴い、セキュリティの強化とソフトウエアの信頼性向上が強く求められている。

 同時に、開発現場では商品サイクルの短期化により、開発効率の向上と期間の短縮が要求されている。このような課題の解決方法の1つとして、早稲田大学の中島教授と筑波大学大学院の追川助教授が研究開発を進めているのが仮想化OSだ。

 仮想化技術はサーバやPCの分野では既に導入されているが、組み込みシステムの分野ではまだ実用化されていない。そこで、組み込みOS分野でハイブリッドアーキテクチャの開発などの実績を持つエルミック・ウェスコムが両研究室と共同して開発することになった。

 同プロジェクトでは、1つのCPUマイクロカーネルを実装し、その上で仮想化したOSを複数動作させるプログラムを開発する。このOS構造では複数の実行環境がそれぞれ独立して動作するため、アプリケーションやリソースをOSごとに分離することができる。

 それにより、それぞれのOS上で動作しているアプリケーションに対して他のOSのアプリケーションからはアクセスできないため、アプリケーションそのものやデータを外部から保護することができる。結果として、(1)外部からの攻撃に耐える強固なシステムの構築が可能になる。

 また、あるアプリケーションに不具合が生じても、その実行環境の内部にしか影響を与えないため、被害を最小限に抑え、システム全体の信頼性が向上するという。それにより、(2)内部で発生した不具合に対して堅牢なシステムの構築を可能にする。

 また、メモリ容量やCPU性能など、システム資源の限られている組み込みシステムでは、特に資源管理機能がシステムの信頼性において重要になるが、仮想化OS構造では、OSごとに資源を割り当てられるため、効率良い資源管理が可能になるという。

 ここで問題になるのは、仮想化OSのデメリットとして、リアルタイム性が損なわれる可能性があることだが、発表では、事前実験により、マイクロカーネル上のITRONが十分なリアルタイム性を実証していることを明らかにしている。

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