熱戦の裏で……ワールドカップを支えるITインフラはこうなる(1/2 ページ)

FIFAのオフィシャルパートナーであるAvayaは、6月に開催されるワールドカップドイツ大会のIT/ネットワークインフラの構築、運用をつかさどる。

» 2006年03月14日 13時18分 公開
[高橋睦美,ITmedia]

 2006年6月、世界が熱狂する1カ月がやってくる。ドイツを舞台に繰り広げられるFIFAワールドカップだ。

 サッカーのピッチは生き物。テレビには映らないけれど、十分な芝の手入れや管理が欠かせない。同じことが大会運営を支えるITインフラにも言える。スムーズな大会運営を支えるネットワークインフラの構築、運用を担当しているのが、FIFAのオフィシャルパートナーであるAvayaだ。

 同社は2001年よりFIFAのスポンサーとなり、2002年の日韓ワールドカップ、昨年開催されたFIFAコンフェデレーションズカップにおいても、ネットワークインフラやITシステムの設計、構築および運用を担当した。ドイツ大会でもそれらの経験を踏まえ、最大規模の「統合ネットワーク」を構築。テレビやインターネットで多くの人が試合の模様が報じられる影で、延べ200人以上のスタッフがITインフラの運用に当たる。

統合ネットワークを基盤に

 ワールドカップドイツ大会では、ドイツ国内の12のスタジアムが舞台となる。ドイツテレコムとともに、スタジアムそれぞれに大会運営やメディア用のネットワークを張り巡らせるほか、アクレディテーション(AD)パス発行をはじめとする各種アプリケーションが稼動するデータセンター、選手や関係者が宿泊するホテル、さらには空港をはじめとする輸送インフラまでを結んだネットワークを構築。これらをコマンドセンターから一元的に監視、運用する。

 利用されるのは1カ月足らずとはいえ、FIFA関係者や選手はもちろん、世界中のメディアや大会を支えるボランティア、セキュリティスタッフなど、約18万人もの人々がこのインフラを利用すると予想される。Avayaでは、一連のインフラに約3万台のネットワーク機器が用いられ、2002年の12.03TBに比べさらに多い15〜20TBものデータがやり取りされると予測している。

 AvayaでFIFAワールドカッププログラムを担当するシニアテクニカルディレクター、ブライアン・ジェファーソン氏は、データと音声を完全に統合させたネットワークの上で「あらゆるエンドユーザーに、よりよい経験を提供していきたい」と述べた。

 単にネットワーク接続環境を提供するだけでなく、無線LANインフラによってスタジアムとホテルとの間でシームレスな接続を提供したり、SIPベースのソフトフォンや安全なインスタントメッセージング(IM)などを利用できるようにしていくという。

ジェファーソン氏 AvayaでFIFAワールドカッププログラムを担当するブライアン・ジェファーソン氏。「予選F組は注目ですね」とも

 統合され、かつ安定したネットワーク接続と多様なアプリケーションの利用といった要件は、企業ネットワークで要求されるものと根本的には同じだ。しかし、ワールドカップという世界最大のイベントならではの課題もある。

 「難しいのは、スタジアムごとにそれぞれ複雑さが異なること。ベルリンのスタジアムのように、歴史的建造物であるためケーブル配線のために壁に穴を開けるのが困難なところもあれば、サーバ設置のため十分な空間を確保するのが困難なところもある。また、ミュンヘンのスタジアムのように、直前まで通常の試合が行われており、短期間でインフラを設置しなければならない場合もある」(ジェファーソン氏)

 同氏によると、ITインフラ設置に割くことができる期間は2週間から最短で2日。同様に試合の後は、早くて2日で全機器の搬出が求められるという。そのため、事前のステージングの段階で機器をモジュール化し、入念にテストを行っておくことが重要だ。Avayaでは、Extreme NetworksやJuniper Networksといったパートナー企業とともにステージング作業を進め、ベストプラクティスを文書化しているという。

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