中堅企業がIT化でビジネスを強化するためにはまず、とにかくあらゆる情報を中央に集めるための「情報導線」を確保し、コントロールすることから始める必要がある。
オンラインムック強い中堅企業のIT化シナリオ。
鍋野敬一郎
中堅企業と大手企業のIT化における一番の差異は、情報の活用度にあるといわれている。日常業務の大半が、情報をまとめて管理し、後続の業務に伝えるワークフローで成り立っていることからも分かる。大手企業は組織が巨大で複雑であるがゆえに、その業務プロセスやワークフローを標準化し、ERPやCRM、グループウェアなどのシステムを使って効率化を図っていることが多い。
これに対して、中堅企業がシステムを活用するのは業務プロセスやワークフローを標準化するためではなく、特化した業務や自社の強みをさらに強化する機能中心のシステム化が中心だ。つまり、大手企業が全社業務の幅広い領域でシステム化しているのに対し、中堅企業はそのカバーする範囲が狭いということがいえるのだ。
中堅企業でERPの導入率が低いという話が出るが、これは既にシステム化している業務の領域が小さく、自社独自の機能を実装する目的でシステム化を行っているケースが多いためではないかと思われる。結果として、部門と部門の業務プロセスをつなぐシステムは存在せず、紙の指示書やExcelの管理表でこうした要件に対応しているのが現実だ。
こうした状況は、「企業規模や部門の垣根が低い中堅企業だからこそシステムが完全でなくてもビジネスを回せる」という意味では強みといえるものの、情報活用や内部統制におけるIT化という観点では明らかにマイナスと言わざるを得ない。
最近のERP導入も10年前とは状況が変ってきている。機能の有無や比較でERPを選定するのではなく、エンドツーエンドの業務プロセスをカバーできるかが評価方法の主流になりつつあるのだ。
これは「企業の業務は複数の部門をまたがる一連のプロセスであり顧客との起点を接点とする業務処理のフローである」という考え方に基づいている。
この考え方を踏まえて、ヒト、モノ、カネ、情報の流れをたどることができれば、突発的なトラブルやボトルネックを常にモニタリングしながら調整することが可能になる。そして、このやり方を生産管理の考え方として体系化し、実践しているのがトヨタ生産方式の本質なのではないかとわたしは認識している。
企業活動は複数部門の協業作業の連携であるため、情報の流れを電子化して集中管理できれば、企業活動全体を可視化できる。それを実現する上で中心となる考え方が「情報導線」だ。
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