マイクロソフト、エンタープライズへの挑戦は続く

マイクロソフトは3月17日、エンタープライズビジネス戦略に関する記者説明会を行った。PLAN-Jの確実な遂行を目指して、多くの施策を進めていく。

» 2006年03月17日 21時19分 公開
[柿沼雄一郎,ITmedia]

 マイクロソフトは3月17日、都内のホテルでエンタープライズビジネス戦略に関する記者説明会を行った。

 同社執行役常務でエンタープライズビジネス担当の平井康文氏は、継続的な同分野への積極的取り組みの姿勢を明らかにした。顧客認知度のさらなる改善、ミッションクリティカル分野への投資拡大、国内の業種に特化したプロフェッショナルな体制作りの3つを柱として、顧客のビジネス革新をサポートする戦略を進めていく。

「就任して3年間、これまで顧客のビジネス価値を高めることに注力してきた。この点については自分でも合格点をつけられる」と平井氏

 同社のエンタープライズビジネスは、今年7月から始まる新会計年度から、顧客の視点に立った新たなシナリオに基づいて展開される。

マイクロソフトが描くエンタープライズ分野のシナリオモデル

 このシナリオは大きく2つに分かれている。企業が抱えるさまざまな6つの問題に対するソリューションと、それを支えるIT基盤の最適化手法である。

IT基盤の成熟度を表すIOM

 平井氏は、現在の国内企業のIT基盤成熟度をIOM(Infrastructure Optimization Model:インフラストラクチャー最適化モデル)を使って説明。「国内企業の半数はまだ“基本”の位置にとどまっている。40%がようやく“標準化”の状態にまで進んだ。“動的”のステージにいるのはほんの数%」(平井氏)

 IT基盤をしっかりと定義統合しない限り、IT化による成果を経営に反映させることは難しい。平井氏はそう述べて、この4ステージからなるIT基盤の最適化をユーザー、プロセス、テクノロジーの3つの観点から進めていく手助けをしていきたいとした。こうした努力を続けていくことで、ITによるビジネス変革が行われ、ミッションクリティカル分野への適用も進んでいくだろうと述べた。

 また企業が抱える問題の中で、特に対応を迫られているコンプライアンスやガバナンスといった内部統制構築のための支援を本格的に行っていくことも明らかにした。Visio 2003で業務プロセスの文書化が行えるテンプレートの無償配布も、その取り組みの一環となる。

 さらに、顧客のIT環境が複雑化していく中で、従来の製品カットのソリューションでは対応が困難になってきている。そこで、平井氏の下では従来のパートナー担当、サービス担当のほかに、テクノロジー担当、産業別企業担当という2つのチームユニットが追加された。平井氏はこれを技術的な窓口と企業別営業部隊と説明している。このように業種に特化したプロフェッショナル部隊を持つことで、顧客やパートナーとの関係をさらに強化し、新たなサービスやソリューションを提供していく体制を作っている。

 また、顧客認知度のさらなる改善では、徹底したセキュリティへのコミットを基本に、妥協のない品質への取り組みも進められる。顧客の要求に沿った複数の製品を組み合わせたソリューションの検証施設として、東京・調布にフィールドテクノロジーラボが設置されている。Office 12やWindows Vistaのリリースに向けて、このラボが拡充されるという。


 今のマイクソフト日本法人は、現代表執行役社長のダレン・ヒューストン氏が2005年7月の就任時に発表した「PLAN-J」に基づいて各種の施策を行っている。

 PLAN-Jとは、同社が日本市場に向けた特別な施策。内容の大枠は、社内外での投資の拡大、産官学との親密なパートナーシップの実現、そして社会/エンタープライズ/コンシューマーすべての分野での技術革新の促進という3つを掲げている。特にエンタープライズ分野での事業拡大が重要なミッションになっている。

 2006年4月で就任4年目を迎える平井氏。数々の施策を語る姿からは、このPLAN-J、そしてエンタープライズビジネスを今後3年間で大きな成功に導くという大きな仕事の重さが感じられた。今年は国内でも「Dynamics CRM」がリリースされる予定であり、平井氏によればERP製品も日本語化されるという。エンタープライズへの挑戦を続ける同社に、こうした武器がどう味方するのだろうか。

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