OpenBSDのシャオ・デ・ラード氏に聞くFocus on People(3/3 ページ)

» 2006年03月31日 14時36分 公開
[Manolis-Tzanidakis,japan.linux.com]
SourceForge.JP Magazine
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ラード 資料の入手について、状況はよくなっていますが、それがOpenBSDの利用者が増えたためなのかどうかは分かりません。アジアの製品が増えたことも1つの理由でしょう(アジアではビジネスの常識――利用者に必要な資料を提供する――がまだ通用します)。この点については、アジアのビジネスは理解が進んでいると思います。資料請求を拒否するアジアの企業は稀ですが、米国企業では応ずる方が稀です。

NewsForge OpenBSDはCDの販売と寄付で運営されていると聞いています。それだけで、すべてのプロジェクトを賄うことができるのでしょうか。

ラード 収入は年によって増減します。寄付は増えたり減ったりしますし、製品の売り上げも同じです。FTPサーバの稼働率は、上がる一方ですが。

 収入が落ち込んだときに備えて留保を積んでいますが、基本的な活動は少しずつ低下しているでしょう。少なくとも成長は鈍っています。実は、hackathonの頻度を増やしたいと考えています。そうした場から多くの驚異的な発展が生まれてきたからです。もっと資金が豊富であれば、経済的余裕の少ない開発者に旅費を支給したいとも考えています。実力のある開発者の中には学生や貧困国に住む人たちがいますから。しかし、OpenBSDの財政は、今、そうした施策を実現できるほど豊かではありません。したいことは山ほどありますが、思うにまかせないのです。

 わたしたちのプロジェクトは寄付の課税控除を受けていないので、寄付は一番頭の痛い問題です。非営利組織になることも検討しましたが、利益うんぬんというのはわたしたちのプロジェクトにはなじみません。ほとんどの寄付は運営している国以外から来ているのが大きな理由ですが、ほかにも制約や規制がたくさんあります。それで、現時点では、納税証明の不要な現金の寄付に頼っているのです。

NewsForge 多くのハードウェアメーカーがOpenSSHを利用しています。そうしたメーカーから何らかの見返りはありましたか。

ラード これまでにOpenSSHに関する活動で得たものをすべて合わせると1000ドルほどになるでしょうか。すべて、個人からのものです。OpenSSHの活動に対して、例え1セントでも、それを利用する企業が送ってきた試しはありません。OpenSSHを直接製品に組み込んでいる企業は数百万ドルの節約になっているでしょう。しかし、Cisco、Sun、SGI、HP、IBM、Siemensなど、中規模のファイアウォールを販売する企業はたくさんありますが、1セントさえも送ってきません。Linuxベンダーも同じです。

 もちろん、稼ぐためにOpenSSHを作ったわけではありません。わたしたちは信念に基づいて完全なフリーソフトウェアとして作っています。1980年代の「telnetインフラストラクチャ」に代わるものとしてです。しかし、その価値の一部を何らかの形で還元する企業さえないのは、まったく悲しいことです。

 どこかの企業をやり玉にあげるなら、Sunがいいでしょう。Sunは毎年相互運用性のイベントを開催しています。NFSなどのプロトコルがテーマで、SSH実装のテストも含まれています。それらのイベントに参加する開発者に交通費と宿泊費を補助してくれるよう2度頼みましたが、断られました。彼らのSunSSHはわたしたちのコードを直接参照して作られているという点を考えれば、まったくもって失敬な話です。Sunは恥ずべきです。恥ずかしいことです。実に恥ずかしいことです。

 ここであえて言わせてもらいます。OpenSSHに欠陥が見つかり、それがSunSSHに引き継がれていたとしても、Sunには教えません。ひょっとすると、そうした欠陥がすでにあるかもしれません。

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