Linuxデスクトップの需要が小売販売チャネルを開く

「今後18カ月以内に、DellやHPなどの大企業が何らかのLinux関連製品を小売店で販売するようになるだろう」と予測するのは、Linspireの社長、ケビン・カーモニー氏。Linuxデスクトップの今後を考える。

» 2006年03月31日 17時20分 公開
[Jay-Lyman,japan.linux.com]
SourceForge.JP Magazine

 Linspireの社長、ケビン・カーモニー氏は、DellによるLinux搭載デスクトップPCの販売と促進を、少なくとも今はまだ望んではいない。

 カーモニー氏は、自社のLinuxオペレーティングシステムをSears.com、Kmart.com、Walmart.com、Amazon.comなどの小売業者が販売するPCに供給する道を開いた人物だ。デスクトップへと移行するLinuxの動きの成否は、テクノロジー、需要、流通チャネルという3つの要因の連携にかかっている、と彼は述べる。

 「この3つの足並みをそろえる必要がある」とカーモニー氏はインタビューで語っている。「Dellには早まった行動はしてほしくない。条件が整うまでには時間がかかるのだ」

 カーモニー氏は、最近になって再びLinux搭載デスクトップPCに対する中途半端な取り組みを発表したDellについて次のように説明する。DellがLinuxの販売と促進の大規模なキャンペーンに取り組むつもりなら、膨大な収益が見込めるだろう。だが、もし期待外れの結果に終われば、このPC業界の巨人は今後5年間Linux PCの供給を抑えるだろう。

 「彼らは需要を生み出さない。ただ満たすばかりだ」とカーモニー氏は語る。「わたしはDellにLinux PCの供給を求めてはいない。わたしが求めているのは需要なのだ」

オンライン販売から小売販売へ

 もっと多くのLinuxデスクトップPCが提供されることを求める人々は、よく不満を漏らしている。小売店が扱っていないから、消費者はLinuxに触れて吟味することができない、というのだ。しかし、大型小売業者のWebサイトを通じたLinuxマシンのオンライン販売は、新しいオペレーティングシステムを世に送り出すのにふさわしい発射台の役割を果たしている、とカーモニー氏は言う。

 オンラインの配布業者および小売業者がオンライン販売で実績を上げれば、次はLinuxPCを店舗に出そうと考えるだろう、とカーモニー氏は語り、近いうちに小売業者との間で大規模な取引があることをほのめかした。

 今日ではLinuxを搭載したデスクトップPCやノートブックPCが店舗で販売されているが、これは安価な商品として典型的な販売形態である。とはいえ、カーモニー氏によれば、Linux製品は、Fry's Electronicsで最も人気のある商品に入っているという。

 Fry'sの店内ではLinuxの専門知識を仕入れることはできないが、より小さな小売店であるMicro Centerでは、店内にLinux製品を陳列してLinuxに詳しい販売スタッフをつけるという昨年の夏に始めた取り組みが成功している、とカーモニー氏は語っている。

 Fry'sとMicro Centerを比較して「それほどの売り上げではない」とカーモニー氏は言う。「だが、Micro Centerにはわれわれが注目した奇妙な傾向がある。顧客が来るようになってから、Micro Centerからのユーザー登録がFry'sよりずっと多いのだ。Fry'sの3、4倍になるだろう」

 これについてカーモニー氏は次のように説明する。Fry'sの典型的な顧客は、200ドルの安価なLinspire PCを「予備用として」、ひどい場合にはWindowsをインストールするつもりで購入する。一方、Micro Centerの顧客は、Linuxをモノにしようと考え、心からそれを望み、実際にLinuxユーザーになる人々だという。

小売店の現状

 Micro CenterのPowerSpecブランドマネジャーを務めるジェイ・プライス氏は、次のように語っている。昨年、Linux専門のコーナーとスタッフが店に導入されて以来、19店舗からなる全国チェーンは、PowerSpecデスクトップPCのLinspireモデルで成功をおさめている。「Micro CenterにおいてLinspire向けの店内陳列と販売スタッフに対する高度な教育に力を入れたことで、われわれは、発展を続ける代替的なオペレーティングシステムを探し求めている顧客のニーズにうまく応え続けている」とプライス氏は話す。

 Micro Centerは全店舗でLinux専門のコーナーとスタッフを売りにしているが、扱っているLinuxディストリビューションはLinspireだけだ。アプリケーションソフトウェアに関しては「上級レベルのLinuxユーザーが、自分用にスタンドアロンのLinuxソフトウェアを購入(またはダウンロード)したいと考えるかどうか、われわれは疑問を抱いている」とプライス氏は語る。プライス氏によると、消費者としてMicro Centerを訪れる典型的な顧客は、家庭用にもう1台PCを増やそうとする人々だという。「Linuxがメインのオペレーティングシステムとして使われることもある」と彼は話している。「Linuxは、代替のオペレーティングシステムか、家庭での2台目または3台目のPC用に使われている場合が多い。 Linuxがオペレーティングシステムの本流として認められるにつれ、こうしたPCの需要は勢いを増し続けている」

慎重な大企業

 需要を見越してDellがLinuxに参入してきたわけではない点を喜んではいるが、カーモニー氏によると、DellをはじめとするすべてのOEM業者は、LinspireなどのLinuxの販売業者や組織との協議を進めながら、Linuxについての計画をじっくりと練っているという。「Linuxについて考えていないOEM業者など1つもない」と彼は語る。「それも、もしLinuxの組織との話がまとまれば、というレベルではなく、いつ参入するかというレベルの問題だ」

 「今後18カ月以内に、Dell、Hewlett-Packard、Wal-Martといった大企業は何らかのLinux関連製品を小売店で販売するようになるだろう」とカーモニー氏は予測している。「最初のドミノはもう倒れかかっている」

 Dellのような大規模なサプライヤー向けにLinuxのデスクトップソフトウェアは準備されていないにせよ、Linuxが表舞台に立ったことで、テクノロジーの進歩、需要の拡大、流通チャネルの機能という3つの要因の足並みは揃っている、とカーモニー氏は述べている。「流通チャネルが開かれつつある状況としては妥当な需要だ。だからわれわれは先を急ぎ過ぎてはいない」

 また、カーモニー氏は、Linuxデスクトップの順調なすべり出しは、Linuxの本格的販売に向けての良い礎だ、と話している。「わたしが語ることのできる最も明るい話題は、販売に携わる人たち全員が、例外なく、幸せを噛みしめていることだ」と彼は語る。「結局、人々が求めるものといえば、それに尽きる」

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