市民と行政の「共生的自治」を市民電子コミュニティーで――神奈川県藤沢市激変! 地方自治体の現実(1/2 ページ)

行政への市民参加を促進する方法の一つとして、インターネット上におけるコミュニティーの存在に着目した神奈川県藤沢市。その背景には「市民・産学・公」の緊密な連携が見て取れる。

» 2006年04月01日 00時37分 公開
[中野利佳,ITmedia]

 Windows 95の発売から10年以上が経過した。多くのユーザーにとってPCは生活に密接に関係したツールとなり、さらに、ブロードバンド環境のインフラ整備という要因も重なって、インターネット上におけるコミュニティーの存在が盛んに取り上げられるようになった。しかし、形成はするものの、残念ながらそれほど長くない期間で廃れてしまうものも多く、ネットコミュニケーションという可視化できないモノは常に流動的なものだということを痛感する。

 現在、自治体の抱える課題の一つに、自らのWebサイトを構築し、インターネットを利用した行政への市民参加を促進することが挙げられる。当然、単なる電子書類の配布や広報の電子化という単方向ではその目的は達成されない。市民からの意見をくみ上げ、行政へ反映させるモデルを築こうと、掲示板などを使った電子コミュニティー空間を設けている自治体も数多く存在する。しかし、「場」を作ってみたものの、「運用」がうまくいかずに閉鎖という結果に至る自治体もまた多いことも事実だ。

 こうした中、テスト運用時期を含めると実に9年間、市民と行政の意見交換の結果が市政に反映されるモデルを確立している自治体がある。神奈川県藤沢市の「市民電子会議室」だ。同市の市民自治部市民自治推進課、斎藤直昭主査に話を聞いた。

藤沢市の電子市民会議室のトップページ。閲覧は市内外問わず自由に行うことができる。発言は登録が必要

官学共同研究によるプロジェクト

 藤沢市の市民電子会議室プロジェクトは、1996年3月に策定された藤沢市情報化基本計画(現在は地域IT基本計画と改名し、改訂)を元に始まっている。また、この前年である1995年の阪神淡路大震災におけるパソコン通信による情報収集・救助活動の例に着目し、インターネットによる地域コミュニティーの形成が今後重要になるという考えの下、開設への準備を進めた。

 実験プロジェクトは、慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)の金子郁容研究室VCOMプロジェクトとの官学共同研究という形で1996年9月に開始された。当初はメーリングリストなどを使った予備実験として開始し、その後、電子会議室の立ち上げのテスト期間を経て、藤沢市の「実験事業」として実施されることとなった。2000年4月には実験期間が終了、その結果をふまえ、本格的な事業として実施されることとなった。

 2001年に本格稼働を開始した同システムは現在、Webによる地理情報システム(WebGIS)を応用した「ふじさわ電縁マップ」や、地域ポータルサイトとの連携活用を行うなど、システムとしての広がりを見せている。現在は、VCOMプロジェクトがこの過程において開発された会議室ソフトウェア「コミュニティーエディタ」をLinux上で稼働させている。

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