共通データベースを基盤に変化する下町――葛飾区激変! 地方自治体の現実(1/2 ページ)

「寅さん映画」に見られるような飾らない下町気質が今も残る葛飾区。そうした区民の暮らしを支えるシステムは共通データベースを基盤とするオープンシステムへと移行した。電子市役所の早期実現を目指す同区を取材した。

» 2006年04月03日 09時00分 公開
[丸山隆平,ITmedia]

 東京都の東の端に位置し、江戸川や荒川などの大小の河川に周囲を囲まれた葛飾区は、いわゆる下町としての印象が強い同区は、「ヒューマニティに支えられた安全で生活感あふれる都市づくり」を目指すべき施策の方向として定めた葛飾区基本計画を上位計画に、「住民情報システム」および「内部事務処理システム」といった基幹システムの再構築を実施、住民サービスの向上とコスト削減を果たした。この取り組みについて、葛飾区政策経営部IT推進課IT調整係長の小林孝氏および主査の曽我義信氏に話を聞いた。

「オープンシステムを採用した共通データベースの採用が、電子自治体の構築を可能にした」と小林氏

葛飾e-plan計画でオープン化への移行を決定

 葛飾区では基本計画の一環として、2002年度から2004年度の3年間にわたる「葛飾区IT推進計画(葛飾e-plan)」を策定した。これは同区の情報化施策を体系化し、総合的に進めていくための個別計画で、計画の中で電子自治体の構築に向け、「住民情報システム」および「内部事務処理システム」の高度化が必要と考え、再構築専門部会を設置、2002年から具体的にシステム再構築の検討を開始した。

 基幹システムの再構築については、2002年9月にホストコンピュータにより運営していた共用電子計算機組織全体をオープンシステムに移行することを決定した。そして開発ベンダー選定のための資料作成プロジェクトチームを設置し、資料作成に取り掛かった。

 葛飾区では1984年にオフコンを導入し、出納・物品管理システムをOA化、1987年には汎用機を使用した情報処理を行う組織として共用電子計算組織を導入し、各種証明書などの住民情報系業務のOA化をスタートさせた。また、各主管課がパッケージなどを利用して課単独で導入している個別システムも相当数に上り、主なもので双方合わせ32課、65システムが稼動していた。これらすべてをオープンシステムへ移行し、一新しようという計画だ。

3つのポイント

 オープンシステム化に至る課題と改善すべきポイントは次の3項目だ。

  1. 電子自治体への拡張が困難:日本ユニシスのホストコンピューターを利用した専用システムが中心のため、拡張が行いにくい
  2. 運用コストの増大:度重なる法改正によるハード維持・システム保守にかかわる費用が増大
  3. システムの複雑化による対応の遅れ:法改正、カスタマイズの結果、データ連携やシステムプログラムが複雑化した上、移動による配置転換などにより担当者の内容理解が低くなったため、対応前の調査が必須となり、長時間化し、対応速度が遅くなっている。

 これらの課題を改善するため専門部会では大きく3つの目標を設定した。

  1. 電子自治体の基礎となる情報基盤の確立:電子区役所の実現に向けて各種電子申請、電子申告、情報提供などに活用できる総合的な行政情報基盤の確立
  2. 法改正時の保守作業削減:法改正時の作業軽減のためのパッケージシステムの導入、適用手法を確立する
  3. 職員作業明確化・連携仕様の統一化:職員、メーカー作業の明確化のためのパッケージシステム導入、共通データベースを中心としたデータの連携仕様の確立

オープンシステムの共通DBを構築

 そして、これらの目標を実現するための施策としてまず、オープンシステムを採用した共通データベースを構築した。住民記録情報、外国人情報、資格情報、税宛名情報など個別業務ごとに管理されている行政情報を一元管理し、各業務間の情報連携を効率的に行うためだ。共通データベースではデータの集約だけでなく、原本の管理や、セキュリティについても規定し、個人情報保護の観点からも問題のない運用を可能にした。

 また、維持コストの軽減・対応速度のスピードアップを図るため、パッケージシステムを導入した。従来のアプリケーションは独自のカスタマイズを加えて運用していたため、法改正や制度改正の都度、システムの変更工数・費用がかさんでいた。パッケージシステムを導入し、法改正に伴う基本的な保守はメーカーに任せることで、法改正に伴うプログラム改修内容の分析、プログラムの改修、テストなどの区職員による変更といった工数が削減され、維持コストも軽減した。

導入した共通データベースの基本コンセプト
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