次期Debianプロジェクトリーダー、アンソニー・タウンズ氏に聞くFocus on People(1/2 ページ)

Debianプラットフォームを「バイタリティ、リクルーティング、ディレクション」という3つの言葉でまとめたのは、今回新たにDebian Projectのリーダーに就任したアンソニー・タウンズ氏。同氏に向こう1年間の抱負を聞いた。

» 2006年04月13日 15時23分 公開
[Joe-'Zonker'-Brockmeier,japan.linux.com]
SourceForge.JP Magazine

 投票の結果、Debian開発者でLinux Australiaの事務局長も務めているアンソニー・タウンズ氏が2006年4月17日付けでDebian Project Leader(DPL)に就任することが決まった。向こう1年間の抱負についてNewsForgeからの質問に電子メールで回答してもらった。

 DPLは、任期が1年で、Debian Technical Committeeの任命、全体決議の提案および修正、プロジェクト資産に関するSoftware in the Public Interest(SPI)の意思決定など数々の権利や責任が与えられている。それでは、質問および回答の内容を紹介しよう。

NewsForge DPLとしての直近の予定を聞かせてください。また、それ以降の数カ月間の予定についても教えていただけますか?

タウンズ まずは頭の中にあるさまざまなアイデアを整理することだね。本当にやる価値のあるものを見極めて優先順位をつけるためだ。それに、今回DPLに立候補した皆やその支援をした人たちのアイデアを無駄にしないようにしないと。

 今は数カ月先どころか数週間先のことで頭が一杯だよ。最近Joey Schulzeの跡を継いだ、アンディ・バース氏とマーティン・ゾベル氏は、Debian 3.1(sarge)の次期ポイントリリースの最終段階に入っている。etch(来るべき次期バージョンのコードネーム、12月にリリース予定)へのAMD64の取り込み準備はほぼ完了だ。そして、DPLとして覚えないといけないことが山のようにある。5月の今ごろには、年に一度のDebian Conferenceに出席するためにメキシコに向かっているはずだ。

NewsForge 期間が長すぎて参加を考えている開発者がその気をなくしてしまう、とDebianの新規メンテナプロセスがよく批判されています。メンテナの定期的な資格更新を求めたテッド氏の提案には同意されませんでしたが、このプロセスの短縮を考えていますか、それとも現状のままで構わないとお考えですか?

タウンズ この1年の大半をかけてあるアイデアについて何人かと話し合ってきた。基本的には、限られたレベルで開発者資格を導入するという内容だ。比較的容易かつ迅速に取得でき、しかも何ができるかについてよりきめ細かい基準を設けている。

 既に提案されていたアイデアだが、以前のわたしはこれに反対していたのだよ。すべての開発者が同等の能力を持ち、誰もが仕事をこなせて問題が起これば仲間に救いの手を差し伸べられる、それが素晴らしいのだ、とね。だが、それができるためには、それぞれの開発者が仲間たち全員から深く信頼されていなければならない。そういう信頼関係を築き上げるまでにはあまりにも長い時間がかかるので、別のやり方を探した方がいい、という考えに至ったわけだ。

 このことは今日のブログにも書いたので、これをきっかけに数週間かけて面白い議論ができればいいと思っている。最終的には実質的な変化が生まれることを期待しているのだが。

NewsForge Debianをよく知らない人たちのために、現在活動をされているプロジェクトとこれまでDebianにかかわってきた経緯について教えてください。また、DPLになると今かかわっているDebianの仕事には時間を取れなくなりますか?

タウンズ  今はバグ追跡システムとアーカイブ管理ソフトウェアの開発とメンテナンスを担当している。かつてはDebianシステムのインストールに用いる 「debootstrap」という抽象度の低いツールや、ネットワークインタフェースの設定に使う「ifupdown」を開発した。それに、Debianのバージョン2.2(potato)と3.0(woody)のリリースマネジャーも務めていた。

NewsForge ここ最近、Debianの存在はどれほど「重要」だとお考えでしょうか? これについては多くの意見が出ています。例えば、UbuntuによってDebianは時代後れのものになった、というものもあります。もちろん、この意見には賛同なさらないでしょうが、現在のDebianにはどれくらい意味があると考えていますか?

タウンズ 誰にとっての「重要性」なのかをはっきりさせなければ、Debianがどの程度「重要」かについて言及はできない。毎日Ubuntuを愛用している人にとってはDebianは少しも重要でないだろうが、実際にUbuntuを作った人々の多くはDebianに対しても思い入れがあるのだよ。例えば、マーク・シャトルワース氏は、Debianの重要性を改めて認め、プロジェクトのアカウントを復活させて今回の選出に投票したくらいだ。

 Ubuntuは、Debianを時代後れのものにしたというより、Debianのテクノロジーと理念をより多くの人々にもたらす、という素晴らしい役割を果たしたのだ、とわたし自身は思っている。それに、両プロジェクトの関係は、確かに複雑ではあるけれど、依然として健全で、今後は良くなる一方だろう、と考えている。

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