中国で正規OS搭載を義務付け、オープンソース奨励でMSには逆風の可能性も(2/3 ページ)

» 2006年04月24日 07時00分 公開
[Paul DeGroot,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版

OSを搭載しないデスクトップPCの禁止
 中国政府は2006年3月末に、正規OSを搭載しない新しいコンピュータの出荷を禁止する新規制を発表した。中国では従来、デスクトップコンピュータの多くは、購入者が安価な海賊版Windowsを入手してインストールするという想定で、OSをプリインストールせずに出荷されていた。

大企業に対する正規ソフト使用の義務付け
 3月に発表された新規制では、中国の大企業(国有企業、合弁企業、外資系企業など)がすべてのコンピュータで正規ソフトを使用することも義務付けられた。

Microsoftとメーカーの契約
 2006年4月中旬までに中国のコンピュータメーカー大手4社(Founder、Lenovo、TCL、Tongfang)はいずれもMicrosoftとの間で、自社製コンピュータでの正規Microsoftソフトの利用を促進する契約を交わした。これらの契約は、ロイヤリティ契約ではなく、Microsoftと契約企業がマーケティング、販売、トレーニングプログラムで協業することを規定しているにすぎないが、中国政府の新規制とともに、Microsoftが中国で正規ソフトの販売を伸ばすのに役立つ可能性がある。これら中国メーカーの1つであるLenovoは、IBMのデスクトップおよびノートPC事業の買収に伴い、一部事業でMicrosoftとOEM契約を結んでいる。中国市場で合計約12%のシェアを占めるDellとHewlett-Packard(HP)も、Microsoftとそうした契約を締結している。

依然として難しい中国市場

 これらの新しい規制や契約の成立は、Microsoftにとって、そして中国における海賊行為や偽造行為の取り締まりの甘さを懸念する他の企業にとって勝利だ。だがこれらは、Microsoftが他のほとんどの地域で享受している優位を同社に保証するわけではない。

 例えば、中国政府はPCメーカーに対し、出荷するPCに正規ソフトをプリインストールするよう義務付けているだけであり、Microsoftソフトのプリインストールは義務付けていない。中国人の多くは、無料のLinuxディストリビューションのいずれかなど最も安価なOSがプリインストールされた新しいPCを購入し、新しいPCの購入時にかねてから行ってきたように、ハードドライブをフォーマットしてWindowsの海賊版をインストールする可能性がある。

 Microsoftは正規ソフトを売れやすくするために、Windowsの最も安価なバージョンであるWindows XP Starter Editionの中国語版を用意するという手を打つことができる。Windows XP Starter Editionは、価格に敏感な新興市場専用の製品だ。同社はStarter Editionに関しては、一般に、販売対象国が海賊行為や偽造行為への対策を講じていることが証明されていると判断した上で販売を行っている。だがStarter Editionは、Microsoftにとって大きな武器にはならないだろう。Starter Editionは機能が限定されているため、ビジネス用途には不向きであり、消費者の支持しか得られない。従来の販売国では、Starter Editionに対する反応はぱっとしないものだ。

 Microsoftは中国の購入者に、Windows XP HomeやProfessionalといったWindowsのフル機能版の利用をできるだけ促そうとするだろう。違法コピーが蔓延しているとはいえ、中国では所得が向上しており、Windowsのフル機能版は中国の消費者にとって購入しやすくなるだろう。2005年第4四半期には、中国市場でのデスクトップコンピュータの平均販売価格はほぼ700ドルだった。世界の他の地域でこの価格帯で販売されているPCの大半にはWindowsが搭載されている。

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