「われわれはERPに逃げない」── 情報を解き放ち業務を改善するIBMの情報管理ソリューションInterview(1/2 ページ)

IBMは旧来の単なるデータ保管という殻を破り、データベース市場のゲームを変えようとしている。同社のアンブッシュ・ゴヤールGMは「われわれはERPに逃げない」と話す。

» 2006年05月09日 07時00分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 データベース市場では、ジャイアントであるOracleとWindowsを基盤に勢力を拡大するMicrosoftがしのぎを削るが、市場全体の成長は年率3〜4%と鈍化している。両社がERPをはじめとするアプリケーション分野に事業の次なる成長を託しているのは皮肉だ。しかし、IBMは旧来の単なるデータ保管という殻を破り、ゲームを変えようとしている。「情報を解き放つことによって、業務プロセスの改善という高い価値を提供する」と話す同社Information Management部門のアンブッシュ・ゴヤールGMにIBMの戦略を聞いた。

昨年までLotus部門を率いていたアンブッシュ・ゴヤール氏

ITmedia Information Management部門として「Information On Demand」を掲げていますが、どのような意味が込められているのでしょうか。

ゴヤール 「Information On Demand」は、アプリケーション、データベース、そしてOSなどから情報を自由に解き放ち、企業の業務プロセスを改善していくという意味合いを持っています。CEOや業務部門の責任者らは、より良い情報に強い関心を示しています。彼らの60%以上は、より精度の高い情報がタイミング良く得られたならば、より的確な意思決定が行えるだろうと答えています。

 組織にとっては、「人」が第一の戦略的な資産であり、人を生かす「情報」はそれに次ぐ戦略的な重要性があります。両者を強化することが、業務プロセスの改善につながるのです。

 例えば、ニューヨーク市警は、さまざまなソースから情報を得ることによって、犯罪の解決に役立てています。また、国際製薬団体連合会(IFPMA)は、IBMの技術を活用して、医薬品やワクチンの臨床試験に関する情報に対して誰でも簡単にアクセスできるポータルサイトを開設しました。われわれの顧客らは、より良いサービスを提供したり、臨床試験データを公開して新しい価値を提供するなどして、イノベーションを実現しています。

 これまで、IBMはデータベースやコンテント管理の製品を主に扱ってきたわけですが、わたしに言わせれば、そうした領域は「Information At Rest」(停滞した情報)にすぎません。これに対して、Information On Demandは、情報を解き放ち、さまざまなイノベーションにつなげるもので、「Information On Motion」(動いている情報)といえるものです。

買収でETLやマスターデータ管理を強化

ITmedia 具体的にはどのような製品ラインになるのでしょうか。

ゴヤール この3年間、われわれはInformation On Demandを実現するために何十億ドルもの投資を行い、開発はもちろんですが、買収も積極的に進めてきました。買収では、ETL(Extraction, Transformation and Loading)ツールのAscential Softwareや、マスターデータ管理のDWLおよびTrigo Technologies、あるいは身元分析のSRDなどを獲得しています。

 こうした新しい製品群は、ETLのような「インフォメーションインテグレーション」(情報統合)とマスターデータ管理のような「インフォメーションアクセス」という2つの基本的な製品ラインに分類できます。これらをデータベースおよびコンテント管理の製品群と組み合わせることで、旧来の単なるデータ保管という殻を破り、情報を解き放ち、新しい価値を提供できるのです。

 日本でも肥後銀行が情報統合の技術を活用し、融資系のシステムを再構築しました。さまざまな融資系システムの情報を横串で得られるようにしたことで、信用リスク管理をより確かなものとし、融資プロセスの迅速化も図っています。

 また、日本の大手デジタル家電メーカーは、IBMの技術を活用して商品マスターデータ管理を導入しました。これまで彼らは、新製品の投入に6カ月もかかっていたといいます。パートナーを含む、販売チャネルのさまざまシステムがかかわっているからです。それが現在では、商品マスターデータ管理によって1カ所を変更するだけで、パートナーのネットワークを含む、すべてに波及させることができ、新製品の投入も1カ月を切る短期間で行えるようになりました。彼らはInformation On Demandによって、競争上の優位を獲得し、ビジネスのイノベーションも実現したのです。

 こうしたイノベーションは、金融や製造だけでなく、幅広い業界で見られるものです。7月21日に「Information On Demand Conference」を東京で開催し、新しいIBM DB2 Viperと情報統合などの製品群を組み合わせた事例をさらにご紹介できると思います。

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