ESAとそのエコシステムでイノベーションを加速するSAPSAPPHIRE '06 Oralando Report(1/2 ページ)

オーランドで開催中のSAPPHIREで、製品開発を担当するアガシ社長は、Salesforce.comとの差別化を図るハイブリッドモデルや、アプリケーション利用の簡素化を図る新しいProject Museについて話した。

» 2006年05月18日 12時53分 公開
[浅井英二,ITmedia]

 米国時間の5月17日午後、オーランドで開催中の「SAPPHIRE '06 Orlando」では、製品開発を担当するシャイ・アガシ社長がキーノートに登場し、「簡素化」をキーワードに、ESAとそのエコシステムによってイノベーションを加速するSAPの戦略について語った。

SAPで製品開発を統括するアガシ社長

 アガシ氏は、SAP ESA(Enterprise Services Architecture)とSOA(サービス指向アーキテクチャー)との違いから始まって、最近リリースされた新製品の狙いやパートナーとのエコシステムに至るまで、駆け足で紹介した。本来であれば、キーノートの1時間の枠にはとても収まらない、盛りだくさんの内容だったが、それがESAによって大きく変わりつつあるSAPを象徴している。

さまざまなレイヤーでプロセスを簡素化

 プロセスの簡素化は、コンプライアンスの観点からも、経営を可視化して業績を高めるという観点からも求められる。アガシ氏は幾つかのレイヤーでプロセスを見直すことによって、プロセスの簡素化が可能だとしている。彼がキーノートの中で挙げたのは、コンプライアンスの強化や、アプリケーションコアの統合、顧客やサプライヤーとの関係管理強化などだ。もちろん、これらはすべて今回のSAPPHIREでの発表を反映したものだ。

 SAPはこの日、「GRC」(Governance, Risk management, and Compliance)のための新しいビジネスユニットを立ち上げている。SAPでは、包括的なソリューションを2007年夏をめどに提供するとしているが、アガシ氏は、「コンプライアンスをビジネスプロセスに組み込んだ、業界で最初の包括的なフレームワークだ」と話す。この分野で実績があり、SAPのパートナーでもあったVirsa Systemsの買収も先週完了し、約250人のスタッフがGRC部門に加わるという。

 やはりこの日、フラグシップ製品「mySAP ERP 2005」の広範な正式出荷が発表されているが、これはアプリケーションのコアを統合する取り組みでもある。NetWeaverを基盤とし、インダストリー固有の機能もコアのERPに組み込まれたという。

Salesforce.comへの回答はハイブリッドモデル

 オンデマンドアプリケーションの世界では、いつの間にかSalesforce.comが一歩抜け出した格好だが、アプリケーションのジャイアントであるSAPが黙って見ているわけにはいかない。

 今年の2月と5月、相次いで「SAP Sales on-demand solution」と「SAP Marketing on-demand solution」の提供を開始しているが、このSAPPHIREでは、新しい「SAP CRM 2006s」を発表するとともに、2007年までにすべてのCRM製品をオンデマンドで提供することも明らかにした。

 Salesforce.comに真似できないSAPの強みは、企業がCRMを戦略的に駆使したいと考えたとき、当然ながらライセンスを購入して社内に導入できる点にある。これは、必要なときにすぐにオンデマンドでCRMを導入し、ビジネスが拡大したときにも社内導入へ容易に移行できることを意味するだけではない。CRMを社内導入している本社が、支店や販売パートナーらと統合を図りたいときにも有効だ。支店や販売パートナーらがオンデマンド版を利用すればいい。

 「同じコードのCRM製品をオンデマンドで提供しているハイブリッドモデルだからで、競合他社に同じことはできない」とアガシ氏。

 この日、SAPはタイミングを計ったようにSRM(Supplier Relationship Management)ソフトウェアのリーディングプロバイダーとして知られるFrictionless Commerceの買収も発表している。NetWeaverに対応しているため、実績のある電子調達機能をすぐmySAP SRMと連携できるのも大きな特徴だ。また、電子調達機能をオンデマンドでも提供しており、SAPとしては、CRM分野と同様、ハイブリッドモデルを展開できる。

 こうしたCRMやSRMの柔軟な配備によって、アガシ氏は顧客やサプライヤーとの関係管理を簡素化できるとする。

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