早すぎても遅すぎてもいけないテクノロジー採用のタイミング顧客満足度ナンバーワンSEの条件〜新人編(2/2 ページ)

» 2006年05月22日 08時48分 公開
[栗原 潔,ITmedia]
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 テクノロジー導入ライフサイクルは、もともとはベンダーのマーケティング戦略立案のためのフレームワークだが、ユーザーのテクノロジー購買の検討材料としても参考になるはずだ。

 新しいテクノロジーが市場に投入されると初期市場(アーリー・マーケット)と呼ばれる状態になる。この段階では、一部の「テクノロジーオタク」層が購買を行っているに過ぎず、まだ実需は存在しない段階だ。

 特定のニッチ市場(すきま市場)においてそのテクノロジーの有効性が明らかになり、ニッチ市場がほかのニッチ市場を刺激して、テクノロジーの普及が段階的に進むようになると「ボーリングレーン」と呼ばれる段階になる。ボーリングのピンがほかのピンを倒していくように連鎖的に市場が拡大していくというイメージだ。例えば、無線ICタグなどが今この段階にあると言えよう。

 そして、広範な市場にアピールできる応用、つまり、キラーアプリケーションが登場すると、テクノロジーはトルネードと呼ばれる段階になる。この段階で市場は急成長し、市場カテゴリーにおける圧倒的勝者(例えば、マイクロソフトやオラクル)が生まれることになる。そして、初期の混乱が収まると、市場は安定化し、テクノロジーも安心して工場有為できる段階になる。これをメインストリートと呼んでいる。

キャズムを越える

 ここで重要なポイントは初期市場とトルネードの間に「キャズム」と呼ばれる溝が存在するということだ。すべてのテクノロジーがキャズムを越えられるわけではない。キャズムを越えられずに市場から忘れ去られてしまったテクノロジーは数多く存在する。必ずしもテクノロジーとして最も優秀な製品がキャズムを越える可能性が高いとは限らない。テクノロジーとして見れば極めて優れた製品が市場でうまく成功できなかったケースは、IT業界の歴史の中にあふれている。

 いずれにせよ、キャズムの前の状態とキャズムの後において、テクノロジー購買のリスク特性は大きく異なることになる。企業の情報システム担当者が、製品を購買の意思決定を行う場合には、特定のテクノロジーに投資する場合には、常に「この製品やテクノロジーはテクノロジー導入ライフサイクルのどの位置にあるか」を自問してみることが必要だ。キャズムを越えていない場合にその製品・テクノロジーを購買するためには、それ相応の理由が必要となる。つまり、リスクを相殺できるだけの先行者利益の可能性があるかということだ。

 「テクノロジー導入ライフサイクル」の考え方は極めて単純だ。しかし、この考え方を理解しているかいないかで、企業のIT投資の効率性は大きく異なることになるだろう。

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