顧客ニーズを先取り。SOX法対策からめて経営層にアピールブレードサーバー、国産ベンダー各社の現状と戦略――ヒット商品分析

ユーザーからの認知度を高めつつあるブレードサーバー。中堅、中小企業への導入も進んでいるという。まだ市場規模としては小さいが、各国産ベンダーの戦略はどのように進められているのか。今回はNEC、日立製作所、富士通の戦略について取材した。

» 2006年06月02日 07時00分 公開
[越後耕一+アイティセレクト編集部,ITmedia]

二つのモデルで二つの異なるニーズに的確に対応する――NEC

 外資系のベンダーに対して、日本のベンダーはブレードサーバー市場に対してどういう戦略を展開しているのだろうか。まずはNECの場合から。

 同社は、国内で最初にブレードサーバーを製品化したベンダーだが、クライアント・サーバ販売推進本部グループマネージャーの浅賀博行氏によると、「ターゲット別にCPUを一つ搭載している1wayと二つ搭載している2wayという二つのモデルを出している」とのことだ。

 具体的には、1wayモデルは大量のサーバーを導入するデータセンターなどを、2wayモデルは一般のIAサーバーの統合化を目指す企業をターゲットとしている。

 日本のオフィス賃貸料は米国の約2倍、電気代も欧米の約2倍、さらにサーバーの消費電力は1年前と比べると約1・7倍になっている。となると、都心部にあるデータセンターではそうしたコストを削減しながら、ブレードを集積化しなければならない。それを実現するのが1wayモデルであり、かなり伸びているようだ。また、2wayモデルについても「最近は、お客様からサーバーを統合するならブレードでという要望が増えてきており、売り上げはかなり伸びている」と浅賀氏。また、クライアント・サーバー販売推進本部主任の谷長薫氏は、「世の中の流れで、運用というところがキーワードになってきているので、サーバー統合と言ったら、仮想化によって可用性が高められたり、遠隔管理や自律復旧ができたり、セキュリティも向上できるブレードサーバーにということにほぼ100%になってきている」と言う。

 現状ではユーザーは一部上場企業が多いが、これからは中堅・中小企業の掘り起こしが必要で、それには「販売店さんに製品特性やメリットをきちんと理解していただいた上で、お客様に提案していただくことが非常に重要だ」と浅賀氏は語る。

統合サービスプラットフォームで攻勢をかける――日立製作所

 「ブレードに賭けてますから」というエンタープライズサーバ事業部、統合プラットフォーム販売本部、販売統括部部長の宇賀神 敦氏の力強い言葉からも分かるとおり、ブレードサーバーに並々ならぬ力を入れているのが日立製作所だ。そして、その熱い期待を担っているのが、ブレードサーバーを核にストレージ、ネットワーク、システム管理ソフトウェアを統合した「BladeSymphony」という統合サービスプラットフォーム。

 「BladeSymphony」はもともと第2世代のブレードサーバーという位置付けで、高性能・高機能・高信頼を追求して基幹系にまで適用領域を広げ、同時にサーバーだけではなくストレージ、ネットワークも含めた統合管理、一元管理というところまで踏み出して、高い統合度と運用性を目指している。「その両輪で、より基幹系のシステムに利用していけるというところが、他社にはないところだと思う」と宇賀神氏は意欲満々だ。

 適用領域が広く、小さく始めて大きく育てる成長型プラットフォームなので、これまでに大型メインフレームから置き換えた北海道漁業協同組合連合会、給与・会計・販売管理などの基幹システムをPCベースのクライアント/サーバー型システムから置き換えた中堅企業の霧島酒造など、さまざまな事例があがっている。

 「ブレードサーバーとしてだけでももちろん使えるし、我々はとにかくいろんな事例を紹介し、お客様に『ブレードサーバーって、こんなところにも使えるんだね』という認識を持ってもらえるようにアピールしていきたいと思う」

 宇賀神氏によると「ここへ来て、上昇カーブに乗っかって来ている感じがする」ということなので、否が応でも力が入るところだ。

サーバー、リソースの統合でマシンルームの業務改善を提案――富士通

 「最近は、ブレードサーバーでどうしたら運用管理を効率化できるのだろうかという点にお客様の関心が集まってきており、運用管理面の手法をきちっと提案できるかどうかというところが大きなポイントになってきている」

 そう語るのは、富士通のサーバシステム事業本部IAシステム事業部プロジェクト部長・木村敏幸氏だ。同社では、フロントエンド層からバックエンド層までの3階層を適材適所ですべてカバーできるようにブレードサーバーをラインアップしている。しかし、同社が提案するのは単なるサーバーの統合ではない。サーバー、ストレージ、ネットワークなどのリソース全体を統合し、統合リソース管理ソフトでリソースを最大限に活用することにより、IT部門には運用管理性を向上させ、ユーザー企業には顧客に高品位のサービスをノンストップで提供できるようにするというのだ。

 「サーバーやリソースを統合すると、運用性・管理性の問題が最初に見えてくる。それに対応することにより、マシンルームの業務を改善していこうというのが我々の提案だ」(木村氏)

 では、現状でどういう企業がユーザーになっているのだろうか。プラットフォームソリューションセンター プロダクトマーケティング統括部 PRIMERGY部部長の野澤信之氏は「大企業が多いが、中堅の上位企業からもサーバーを統合したいということで、ブレードへの引き合いが結構多い」と言う。そして、導入を勧める際には、運用管理性の違いを経営トップに説明するのは難しいので、「ガバナンスやSOX法、業務の継続性に関する効果などを説明できるような形で提案することが大事だ」と語る。

アイティセレクト6月号より



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