「ソフトウェア開発に調和を」――IBM Rationalダニー・サバー氏IBM RSDC Report

フロリダ州オーランドで開催中の「IBM Rational Software Development Conference 2006」。単なる機能性の話にとどまらず、ソフトウェア開発全体でどのように調和を図っていくかに主眼が置かれ、ソフトウェア開発におけるライフサイクルを統治するRationalが印象づけられた。

» 2006年06月06日 17時00分 公開
[西尾泰三,ITmedia]

 フロリダ州オーランドで開催中の「IBM Rational Software Development Conference 2006」は米国時間の6月4日に開幕した。ディズニーワードル内のホテルで開催された同イベントの初日は早朝から基調講演が行われ、「ソフトウェア開発にもSCMのような機構を」とIBM Rational部門でマーケティングと戦略を担当するロジャー・オーバーグ副社長はRational製品が顧客に提供する新たなイノベーションについて説明した。

 オーバーグ氏は、これまでRational製品がソフトウェア開発に対して提供してきた価値は甚大であるとしながらも、現在のソフトウェア開発はさまざまな要因が絡み合うことで非常に複雑かつ煩雑なものになっていると指摘、単なる機能性だけでなく、さまざまな要因に柔軟性に対応していける価値の最大化が求められていると話す。基調講演の冒頭、バンド演奏が行われたが、その構成メンバーのいずれか1つが欠けてもバンドとして成立しないように、ソフトウェア開発においてもそのすべての工程でいわゆるSCM(Supply Chain Management)のような仕組み――ソフトウェア(開発)チェーン――がより必要とされる時代に入っていると話す。その考えは「Software In Concert」という今回のキャッチフレーズにも見られる。

オーバーグ氏 「ソフトウェア開発にもSCMのような仕組みが必要」とオーバーグ氏

 サバー氏が壇上に引き上げたRational部門のゼネラルマネジャー、ダニー・サバー氏も、実際のIBMのクライアントのものであるという複雑に組み合わさった実際のアーキテクチャ図を例示し、多くの企業が今日直面している問題の複雑さについて触れ、ソフトウェアの進化がビジネスの変化に追従する必要性はあるが、しかしそれを理由にソフトウェア開発自体のプロセスが停滞することはないし、そうなってはならないと話す。加えて、ソフトウェア開発におけるガバナンスの重要性についても触れ。そうしたことを踏まえてRationalが現在フォーカスしているのは「ソフトウェアライフサイクルの統治」であるとした。統合化を推進することが重要とされるオンデマンドビジネスと同様の思想がソフトウェア開発にも不可欠となってきたのだ。

昨年Rational事業部のGMに就任したサバー氏

 ソフトウェア開発の現状を見据え、ビジネス上の課題とRational製品を早急かつ密接に結びつけることにフォーカスしているとサバー氏。そうした命題を解決するためのツールについては、オープンに基づく統合化されたものが理想的であるとし、オープンスタンダード、オープンアーキテクチャ、オープンソースソフトウェアに基づいたものを今後も提供していく姿勢を見せた。

 「オープンな技術の採用は問題を解決する唯一の方法ではないが、ソフトウェア技術が、プロプライエタリなものをベースとしたものからそちらへ移行し続けることには疑いの余地はないし、10年後を考えると不可欠」

 また、サービスのモジュラー化については、「昨日作成したコードは明日のレガシーとなる。しかし、安定したコードを再利用することで、ビジネスを迅速に進めることもできる。つまり、再利用可能なモジュラー型の構築を重視する必要がある。もちろんこの考えは新しいものではないが、コードだけではなく手法について近代化を図っていく」とサバー氏。続けて、グローバルなソフトウェアデリバリーにおける複雑性を最小化し、柔軟性を最大化するという相反した要件を解決するためのチームプラットフォームの価値も説いた。こうした環境下で開発手法の標準化や変更管理をしっかりと行うことで開発\変更プロセスに監査性を持たせるなど能動的なガバナンス体制を確立することで、法令順守への対応も図っている。

 サバー氏によれば、今回発表したRational製品はそれらに的を絞った機能強化が図られているという(関連記事参照)。今回発表された製品群では、ソフトウェア開発に関連するすべての要素を、抽出・自動化するなどして、これまで見落としがちであった開発と運用をつなぐ一方、地理的に分散した環境でのグローバル開発で一貫したトレーサビリティなどを提供している。さらに、ガバナンスの観点から、ワークフロー機能によって、開発者、テスト担当者、運用管理者の職務分離を強化するなど法令順守もカバーした、ソフトウェア開発におけるライフサイクルを統治する基盤として、Rationalが進化していると強調した。

 今後のロードマップとしては、2006年の第4四半期にデベロッパーやテスター向けの機能強化、具体的にはモデリングやテストをより広範かつ簡単に行うためのツールの提供を予定している。すでに会場ではテクノロジープレビューとして公開もされており、これまで行えなかったようなテストの実施も行えるようになるようだ。とはいえ、すべてがワンパッケージで提供されるのではなく、必要な機能を必要に応じて選択するモジュラー方式で提供される。このような施策により、ソフトウェアの開発、提供、管理をより密に連携させていく考えだ。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ