シンクライアントの特徴とは?シンクライアントの真価を問う(2/5 ページ)

» 2006年06月13日 14時00分 公開
[宮本久仁男,ITmedia]

●PC(Webブラウザを利用した端末)

 1990年代後半以降、ユーザー環境でのインターネット利用が一般化した。同時にシステムにおいても、インターネット経由のアクセスを許可するケースが多くなっている。だがだからといって、システムが増えれば増えただけ、端末プログラムを増やすというわけにもいかない。一方でWebブラウザは高機能化し、表現力も格段に向上している。

 さて、前述のC/Sシステムの大きな欠点は、クライアント側の自由度が高い一方で、開発/展開/保守のすべてにコストが掛かるという点である。

 Webブラウザの高機能化という現状と、C/Sシステムにおけるクライアントソフトウェアの保守費用の増大、そしてWebブラウザの操作に比較的多くの人が慣れ親しむようになったという状況もあり、個別の端末プログラムを開発するよりも、Webインタフェースを用いた端末開発を行うケースが増えてきた。これは、C/Sシステムのアプローチを、さらに一歩進めたものと言えるだろう。

端末の高機能化で浮上した問題点

 ここまで、ダム端末からPC端末への変遷について述べてきた。ダム端末からPC端末への移行にともない、端末そのものの機能は向上し、自由度も格段に向上した。だが一方で、以下のような問題も浮かび上がっている。

・TCOの上昇

TCO(Total Cost of Ownership/総所有コスト)とは、PCを使い続けるために必要となるコストだ。この中には最初にPCを購入する費用だけでなく、ソフトウェア購入、サポート費用、運用管理、そして個々のユーザーが掛ける手間などがすべて「コスト」として含まれる。

 端末が高機能化すれば、当然、ユーザーに掛かる手間は大きくなる。またPC本体は多くの部材から構成されているため、ダム端末に比べて故障率が高い。こうした故障やその他トラブルに対応するための人件費もすべてTCOに含まれる。したがって通常、PC1台当たり年間で数十万円程度のTCOを見込む必要がある。

・情報の分散保持

 C/SシステムにおけるクライアントでもWebブラウザを用いたクライアントでもそうだが、クライアントの設計/運用上特に留意しない限り、PC側に情報の一部、もしくは全部が残ることがある。

 特に、業務の流れの中では、「客先に出向き、その場で提案書を手元のPCで作成し、提出する」などというケースも生じる。こうした場合、ユーザーがよほど気がつく人でない限り、その提案書の情報が手元のPCに残ることになる。本来1カ所で管理すべき重要な情報ですら、編集などの作業のために手元のPCで開いたとなると、そのPC上に何らかの形で情報が残っていると考えるのが妥当だ。

・リスクの拡大

 ダム端末が紛失、盗難に遭っても、まさかそのダム端末にデータが入っていると思う人はいないだろう。ダム端末は高価だが、それでも「物理的な資産価値」以上の被害は発生しない。

 ところがクライアントPCの場合は異なる。データを持った状態でPCを紛失したり盗まれた場合、その中に含まれるデータの価値にもよるが、PCの物理的な資産価値以上の大きな損失を被ることが多い。現実に、ノートPCの盗難や紛失」にともなう情報流出/紛失が、情報漏えい事故として大きくクローズアップされるようになってきている。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

注目のテーマ