シンクライアントの特徴とは?シンクライアントの真価を問う(5/5 ページ)

» 2006年06月13日 14時00分 公開
[宮本久仁男,ITmedia]
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残る課題――リッチアプリケーションの利用

 ここまでの話を踏まえると、シンクライアントシステムはまるでいいことずくめのように見えるかもしれない。しかし、まったく問題がないというわけではない。

最もよく挙げられる課題が、「アプリケーションの互換性」だ。が、結論から言ってしまうと「動かないものもある」というのが実情だろう。筆者はWindowsのターミナルサーバ環境下でアプリケーションの動作検証を行ったが、

・Microsoft Office製品は動作する
・社内で開発した業務アプリケーションのうち古いものは動作しないものもある
・市販のサードパーティ製ソフトウェアの中には動作しないものがある

という結果だった。

 特に「ユーザーが個々のPCにインストールして使う」ことしか想定せずに開発されたアプリケーションは、シンクライアントシステムでは動作しないことが多い。中には、アプリケーションが独自に、単一のPC上での多重起動を制限しているような場合もある。また、ローカルシステム上の特定の名前のファイル(例:c:\program files\app\app.iniなど)にユーザー設定を書き込む仕組みのアプリケーションなどは致命的である。こうしたアプリケーションは、個々のユーザーに対応したエントリを持つことができないからだ。

 逆に言えば、シンクライアント環境において「筋がいい」アプリケーションとは、複数のユーザーを想定して設計/開発されたソフトウェアだと考えればよい。

 また、シンクライアントサーバにHDDを直接接続し(DAS構成と呼ばれることもある)、そこにユーザープロファイルを格納する場合と、NASなどを使ってネットワークドライブに格納する場合とで、異なる挙動を示すソフトウェアも存在するため注意が必要だ。

 いずれにせよ、シンクライアント環境を導入する際は、同一の環境を用意して利用するソフトウェアを検証する必要がある。

 以上、シンクライアントシステムの概要について説明してきた。次回は、具体的にシンクライアントを実現する方式を解説していこう。

宮本 久仁男

1991年NTTデータ入社。OS開発・維持管理、Web-DBシステム開発と管理、社内技術支援、CIOスタッフなどを経て、現在は技術調査業務に従事する。プライベートでもOSやネットワーク、セキュリティ関連技術に興味を持ち、各種検証や発表/講演を行っている。PMP、RHCEなどの資格を持ち、個人としてMicrosoft MVP (Windows - Security)を受賞している。


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