LinuxWorldがソウルに登場(1/2 ページ)

先週ソウルで開催された、韓国初のLinuxWorld Conference and Expo、国内のITインフラストラクチャーにLinuxを積極的に採用しているだけあって、国内ベンダーだけでなく、政府機関、高等教育機関、さらには各種の支援団体が並ぶ場となった。

» 2006年06月23日 15時49分 公開
[Rob-Reilly,Open Tech Press]
SourceForge.JP Magazine

 先週ソウルで開催された、韓国初のLinuxWorld Conference and Expoに参加してきた。この3日間のイベントでは、業界リーダーらによる基調講演のほか、さまざまなトレーニングセッションが行われ、展示会場には約50社のブースが設けられていた。

 オープニングのテープカットセレモニーは10人あまりの政府高官や名士の手で行われ、この様子は現地のテレビで放映された。カンファレンススポンサーである IDG World ExpoのCEOを務めるデビッド・コース氏は、同イベントの開幕を告げるに当たり、LinuxWorldを韓国に招聘できたことを非常に喜ばしく思うと語った。

 初日の月曜日は、参加者の出足はそれほどよくなかった(といっても、LinuxWorldカンファレンスはだいたいいつもそうである)。火曜日は韓国のメモリアルデー(戦没者慰霊日)に当たり、かなり多くの参加者が展示会場のブースを見て回っていた。水曜日の人出が最も多かったようだが、もう少し多くの参加者を期待していたと語るベンダーも幾つかあった。

 会場となったCOEXカンファレンスセンターは、ボストンで開催されたLinuxWorldの会場に比べると3分の1ぐらいの大きさだった。参加者は展示会場から個々のトレーニングセッションに歩いて移動でき、軽食を取ったり、座って休んだりする時間もたっぷりあった。

 このカンファレンスセンターはCOEX Intercontinental Hotelに隣接しており、地下には夜の気分転換や昼食休憩にうってつけのショッピングモールがあった。

 木曜の朝は、低く響く鐘の音のせいで午前3時30分に目が覚めてしまった。鐘の音はその後10分ぐらい続いた。通りの向こう側にある奉恩寺の大きな鐘が鳴っていたのだった。早朝の勤行の間、僧侶が大きな木の棒で鐘をつくのである。今後カンファレンスに参加する方は、ソウル滞在中に一度ぐらいは奉恩寺まで夜明けの散歩を楽しんでみるといいと思う。

韓国のLinux事情

 韓国は、国内のITインフラストラクチャーにLinuxを積極的に採用している。ITソリューションを開発している国内ベンダーだけでなく、政府機関、高等教育機関、さらには各種の支援団体も、Linuxの導入に貢献している。カンファレンスの取材中、私は何人かの組織幹部や経営者に韓国のIT事情について話を聞くことができた。

Korean Educational & Research Information Service(KERIS)

 KERIS(韓国教育学術情報院)は、e-learningについての調査と、教育・研究に関する情報収集を行う組織である。さらに、National Education Information Service System(EDUNET)、Research Information Service System(NISS)、National Education Information Service(NEIS)といった各種情報サービスの運用も行っている。

 NEISは4800台以上のサーバから成る情報サービスで、小中学校の教師/学生のレコードと授業計画を管理している。約600台のグループサーバ(Unix)、2200台のユニットサーバ(Unix)、約400台のWebサーバ(Unix)から成り、バランス処理管理タスクを行っている。このWebベースのシステムは、1万1000の学校と約40万人の教師をサポートしている。

 KERISのCEO兼社長であるテジョン・ハン氏は、韓国の国家的競争力は教育面の努力にかかっていると語った。KERISの約1万5000人のスタッフは、数年前からLinuxとオープンソースを使用している。KERISは現在、40の小中学校を対象として「ユビキタス・ラーニング・プロジェクト」というパイロットプログラムを実施し、タブレットPCやPDAなどのデバイスが韓国の学生の学習意欲の向上や学習機会の提供にどのように貢献するかを研究している。

Electronics and Telecommunications Research Institute(ETRI)

 ETRI(韓国電子通信研究院)は、新技術の研究所から企業への移行を支援するための組織である。ETRIの主な関心分野としては、ウェアラブル・コンピューティング、ホームネットワーキング、次世代スーパーコンピュータなどがある。デジタルビデオ放送、ワイヤレスブロードバンド、組込みシステム開発、ロボティクスなども、ETRIが注目している分野である。

 Digital Home Research Divisionの部長であるキュチェ・キム博士は、同部門があらゆる種類のデジタルメディアと情報伝送のゲートウェイとして機能するホームサーバを開発したと説明した。ホームサーバ技術への取り組みを始めたのは1999年のことである。現在では、1300万戸の韓国家庭のうち約100万戸がホームサーバを設置している。自宅の照明や空調、各種機器を、任意のWebブラウザから(場合によっては携帯電話から)操作できるのだ。

 デジタルコンテンツ(特にビデオ)の配信をさらに拡大するために、キム博士は帯域幅を増大させる方法の研究を進めている。一般家庭への光ファイバの普及にともない、2009〜2010年には帯域幅が1.5Gbpsに達するだろうというのがKim博士の予想である。

 また、QPlusの開発にも多大な労力を費やしている。QPlusは、一般的なLinuxプラットフォームをベースとし、3レベルのマイクロプロセッサデバイスをサポートする埋め込みLinuxオペレーティングシステムである。Standardバージョンはセットトップボックスやホームサーバに用いられ、約500Kバイトのカーネルを格納できるマシン上で動作するように設計されている。Microバージョンは組み込みデバイスに用いられ、リアルタイムオペレーティングシステムの機能を備えており、100Kバイトのメモリで動作する。Nanoバージョンはマイクロコントローラサイズのネットワーク接続センサーデバイスに用いられ、使用領域は約10Kバイトである。QPlusの背後にある考え方は、1つのインタフェースAPIを開発することで、QPlusをさまざまなデバイスに移植できるようにするということである。Target Builderツールキットを使用すると、プログラマーは同じ開発環境を使って、すべてのターゲットプラットフォーム用のアプリケーションを簡単にビルドすることができる。

Korea IT Industry Promotion Agency(KIPA)

 KIPA(韓国ソフトウェア振興院)は、韓国のソフトウェア企業とデジタルコンテンツ業界を支援する非営利団体である。オープンソースに関してベンダーや政府から寄せられた質問に答える技術センターも運営している。わずか2年前に設立され、現在では170人のスタッフを抱えている。13人の技術専門家とオープンソースソフトウェア情報のデータベース(FAQを含む)を擁し、国内ベンダーの要求に応じて支援を行っている。

 Open Source Software Promotion Centerの副所長であるスンハ・ヤン氏は、2002年の時点で、韓国の市場全体におけるLinux採用率は10〜12%で、政府での採用率は6%だったと述べた。当然ながら、KIPAは100% Linuxである。

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