最後に目先を変えて、IP電話のように、PCを電話にしてしまうことができるソリューションとの相性を考えてみよう。これまで筆者が見てきた範囲での話だが、「シンクライアントとIP電話の組み合わせは、きわめて限定された構成でのみ成立する」といえる。
現状で考えられるのは、以下のようなケースである。
→ シンクライアント端末として汎用PCを用い、電話は汎用PCから使う、というようにすればいいのだが、その場合は端末まで含めた完全シンクライアント化は難しい。また、端末に利用しているPCのセキュリティ対策も必要になる。
→ Windows XP Embeddedには、IP電話ソフトウェアが動作する可能性も、またIP電話用のハンドセットが動作する可能性もある。ただしほとんどの場合、端末ベンダーやIP電話システムのベンダーは、そのような構成での動作を保証していない。このため、トラブル発生時の対処は完全に自己責任になる。
→ 機能面や費用面で納得できるのであれば、この方向で検討するのがベターだろう。ただし、このようなケースは得てして特定のベンダー(もしくは、特定のベンダーグループ)によってソリューションが提供されていることが多い。したがって、サポートがワンストップになる一方、ベンダーによるユーザーの囲い込みを助長する可能性もある。囲い込みを懸念する場合、導入決定は慎重に行う必要がある。
シンクライアントの利用を開始してから半年以上が経過しているが、筆者も含め、おおむね満足している人が多い。それまで机上で使っていたPCの動作音や熱、そしてときおり見舞われる(偶発的な)不具合から解き放たれたのだから、当然といえよう。
ただし、サーバの障害や事故が、ユーザー全体に波及するのもシンクライアント環境である。当然ながら、筆者の使っている環境もこのようなトラブルに見舞われた。
この種のトラブルは、何かのトリガーで頻発するのが常である。もしそのようなトラブルによって仕事の結果が消失するといったことでもあれば、ユーザーは不信感を募らせることになる。そのため導入に当たっては、トラブルが完全にゼロになることはないにしても、事前の試行導入や検証の部分に細心の注意を払うことが何よりも重要だといえるだろう。
1991年NTTデータ入社。OS開発・維持管理、Web-DBシステム開発と管理、社内技術支援、CIOスタッフなどを経て、現在は技術調査業務に従事する。プライベートでもOSやネットワーク、セキュリティ関連技術に興味を持ち、各種検証や発表/講演を行っている。PMP、RHCEなどの資格を持ち、個人としてMicrosoft MVP (Windows - Security)を受賞している。
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