第1回:エンタープライズとLinuxの関係エンタープライズLinuxの実力(3/5 ページ)

» 2006年07月07日 08時00分 公開
[松井一朗,ITmedia]

今なお課題が残るワークグループ分野

 オフィスのファイルサーバやプリントサーバなどで利用されるワークグループ分野は、サーバ市場全体の中でも最もパイが大きい。しかし、ワークグループサーバの大部分は、Windows Serverがシェアを持っている。

 これは、企業の情報システム部門ではなく、部署単位で“カジュアル”に導入されることが多いため。Windows Serverの場合、使い慣れたWindowsクライアントと同じ操作性でサーバを設置、管理できるので、専任のサーバ管理者が不在でも導入できてしまうからだ。最近は、どの企業も全社統一のセキュリティポリシーを掲げた取り組みにより、こうした“カジュアル”に導入されるサーバは減りつつあるが、それでも導入は情報システム部門が担当し、実際の運用管理は各部署に任せてしまう例もある。また、Windowsクライアントがデファクトスタンダードである場合が多く、ファイルシステムとの親和性からWindows Serverが選ばれる例は多い。

 こうしたワークグループ分野に対し、ディストリビュータの取り組みには温度差がある。積極的に取り組むディストリビュータの例としては、まずミラクル・リナックスが挙げられる。同社はNECと共同で「MIRACLE LINUX」と、LinuxをWindowsファイルサーバとして動作させるオープンソースのミドルウェア「Samba」を組み合わせたファイルサーバソリューションを提供している。このソリューションは、NECのLinuxサーバにSambaをあらかじめ導入し、SIとサポート込みのパッケージとして提供されている。WindowsクライアントからWindowsと同じ操作性の管理ツールを利用できるので、専任のサーバ管理者が不在のオフィスでも安心して導入できるものだ。

LinuxサーバにSambaを導入し、SIとサポート込みで提供されるNECの「ファイルサーバソリューションパッケージ」の概要

 ノベルもワークグループ分野の取り組みに力を入れている。同社は、ディストリビューション「SUSE LINUX」をベースに、ワークグループサーバに求められる機能をオールインワンで搭載したパッケージ「Open Enterprise Server」を提供しており、マイクロソフトのサポートが終了した「Windows NT Server」や、まもなくサポート終了を迎える「Windows 2000 Server」からのマイグレーションを積極的に促している。

 なお、余談だがワークグループで利用されるファイルサーバでは、ストレージ専用のアプライアンスであるNAS(Network Attached Storage)が導入されることもある。Linuxの普及を牽引してきた要素の1つに、組込み分野が挙げられるが、NASの多くの製品ではLinuxをベースにしたOSが搭載されている。これは、携帯電話と並んで、Linuxを意識せずにLinuxを利用している好例である。

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