第1回:エンタープライズとLinuxの関係エンタープライズLinuxの実力(4/5 ページ)

» 2006年07月07日 08時00分 公開
[松井一朗,ITmedia]

UNIXからの置き換えが急進中のミッドレンジ分野

 現在のエンタープライズLinux市場が伸長している最大の要因が、ミッドレンジ分野への浸透だ。これまで、さまざまな業務アプリケーションのプラットフォームとして、UNIXが利用されてきた。20年以上も主にサーバベンダーの手によって、いわばハードウェアと一体に開発されてきたUNIXは、現在でも信頼性や可用性の面で優位性がある。発売されて10年以上も経過し、ミドルウェアもアプリケーションも開発環境もそろっているWindows Serverでさえ、なかなか奪取できない市場だった。

 そこに今、Linuxが普及しようとしている。Linuxはそもそも「MINIX」というPC UNIXをリーナス・トーバルズ氏が真似て開発したものであり、UNIXとの高い互換性を持っている。また、操作性もよく似ており、UNIXに精通したサーバ管理者にとってLinuxを扱うのは、それほど苦になるものではない。

 ただし、従来までのLinuxでは、ミッションクリティカルな業務アプリケーションのプラットフォームとして利用するための信頼性や可用性が欠けていた。ところが現在では、オープンソースコミュニティの努力により、UNIXの信頼性や可用性に近づいている。特に、従来UNIXを独自に開発してきたサーバベンダーがLinuxコミュニティに積極的に参画し、自社が開発してきた技術をコミュニティに提供するなど、重要な役割を担うようになったことは、特にミッドレンジ分野における普及を推進するものである。

 そうして開発された現行の最新カーネル「2.6」では、スケーラビリティやセキュリティ機能など、さまざまな機能が追加され、OS自体が大きく機能強化されている。現在、開発が進められている次期カーネルでは、いわゆるRAS(Reliability-Availability-Serviceability)機能がさらに強化される見込み。そうなると、UNIXとの差はますます縮まっていくだろう。

 前述のIDC Japanが発表した調査レポートでも、Linuxサーバの優位性として、Linuxサーバのプラットフォームの中心であるx86サーバの価格が低廉なことともに、UNIXとの互換性の高さが挙げられている。これにより、RISCのUNIXサーバからx86のLinuxサーバへと市場がシフトしているという。

 ディストリビューション単位で見ると、IBM、HP、デル、NEC、富士通、日立の国内外主要サーバベンダーにOEM提供されているRed Hat Enterprise Linuxがこの分野で特に強みを発揮している。

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