Linuxの牙城を崩す――MSのHPCへの挑戦(1/2 ページ)

計算集約型のアプリケーションを実行するWindowsユーザーに、Microsoftはハイパフォーマンスなコンピューティングソリューションを提供する。Windows Compute Cluster Server(CCS)2003の実力は?

» 2006年07月13日 07時00分 公開
[Michael Cherry,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版

 ハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)クラスタ向けのWindows Serverの新エディションが2006年6月、製造工程向けにリリースされ、8月には一般入手が可能になる。HPCは、通常は同じアプリケーションを実行する同一種類の低価格サーバのグループで構成される。新製品「Windows Compute Cluster Server(CCS)2003」は、Windows環境でHPCクラスタの構築を目指す顧客向けの経済的なソリューションだ。ただし、同製品はファーストリリースであり、Excelの新しいサーバベース機能などは利用できるが、その他のサーバ技術にはいくつか問題も残る。

ハイパフォーマンスコンピューティングの現状

 HPCシステムは多数のプロセッサを並列的に稼働させて、計算集約型アプリケーションのパフォーマンスを高速化する。HPCのルーツは物理科学や工学系の大学、研究機関にあり、気象シミュレーションや高エネルギー物理データの分析といったアプリケーションに用いられてきた。

 しかし、HPCは決して象牙の塔に引きこもっているわけではない。ここ10年ほどの間にHPCの商用需要は急速に高まり、全世界で稼働する最も高性能なコンピューティングシステム(www.top500.orgにレポートされている)の上位500台の半数は、財務データの量的分析や石油探索のための地震情報分析など、さまざまな非学術アプリケーションをサポートしている。

 HPCは一般に次のような形式で構築される。

  • 並列ベクトルプロセッシング、大規模並列プロセッシングなど、プロセッサを高速ネットワークで接続したもの
  • グリッドコンピューティング、リソーススカベンジングなど、アイドル状態のデスクトップコンピュータを利用してデータを分析したり、計算を実行するもの
  • ギガバイトイーサネットなどの高速ネットワーク技術を利用して、小型専用サーバを接続した安価なHPCクラスタ、またはワークステーションのネットワーク

 Windows CCSはHPCクラスタに焦点を当て、顧客からの要望が高まりつつあるWindowsベースの経済的なHPCクラスタを構築するためのソリューションを提供する。Microsoftには、このリリースの投入により、HPCプラットフォーム分野でLinuxからシェアを奪う狙いがある。HPCは歴史的にUNIXが支配的な分野だった。そしてUNIXのツールや開発環境の多くは、Linuxが引き継いでいる。そのため、旧来のUNIXシステムから安価なLinuxベースのクラスタへ移行が進むとともに、LinuxはHPC市場でシェアを拡大してきた。Microsoftは、この市場への参入も、また最初の製品投入も遅れた。その結果、本来であればMicrosoftベースのコンピューティングインフラを利用するはずの顧客層が、LinuxベースのHPC導入を機に他のアプリケーションでもLinuxを受け入れる動きを見せ始めた。Microsoftがここでくさびを打ち込まなければ、そうした流れに歯止めを掛けることができなくなる。

Windows Compute Cluster Server 2003とは?

 Windows CCSで採用したMicrosoftのアプローチは、一般のサーバ市場において当初採用したアプローチと同じだ。市場参入に遅れたMicrosoftは、顧客を獲得するために、CCSを他のMicrosoft製品と統合して、導入、管理、利用を容易にする一方、ビジネスパートナーや教育機関と連携して、さまざまなハードウェアやソフトウェアのサポートを進めている。

クラスタ導入を簡便化
 CCSはユーザーからの入力を最小限に抑えた自動セットアップルーチンを利用する。例えば、ノードの追加やセットアップ、ノード間の一貫性の維持にWindows Server Remote Installation Services(RIS)を用いることができる。クラスタ内における作業分散を管理するジョブスケジューラやメッセージ転送インタフェース(MPI)はCCSに統合化されているため、ユーザーはノードを短時間で配備することが可能だ。

クラスタ管理の簡便化
 CCSはMicrosoft管理コンソール(MMC)など、既存のWindows管理ツールに対応しているため、管理者はそこからCCSの管理ツールやコンフィギュレーションツールへアクセスできる。また認証やセキュリティのセットアップはActive Directoryで簡素化され、HPCクラスタへジョブを送るためのユーザー認証も容易になっている。これらの点から、経験豊かなWindows Serverユーザーであれば、CCSの管理はそれほど難しくない。Microsoftの先進的な管理ツール、例えばSystems Management Server(SMS)やMicrosoft Operations Manager(MOM)に投資した企業などは、それらのツールを使ってノードへのアップデートを管理したり、CCSの管理を実行することが可能だ。

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