MicrosoftはExpressionでのデザイン分野への本格参入に当たり、ツール作成などでの協力を企業に呼び掛けた。Expression Web Designerは「今年の年末に」提供される見込み。
デザインツールの新シリーズ「Expression」で新たな分野への参入を図る米Microsoftは、新技術の評判や噂を広め、顧客に新技術採用の準備を整えてもらうために協力してくれるパートナー企業を探している。
Microsoftは7月11日〜13日までボストンで開催したWorldwide Partner Conference(WPC)で、Expressionシリーズのデザインツール群により、新たにデザインツール市場でのシェア獲得を目指す自社の取り組みに対し、パートナー企業の支援を呼び掛けた。Expressionシリーズのツール群はMicrosoftのVisual Studio開発者ツールセットを補完するものとなる。
Microsoft Expressionシリーズ担当の製品マネジャー、ジョン・バイラム氏は13日、「Microsoft ExpressionでWeb2.0の次世代とWindowsアプリケーションを構築する」と題したWPCのセッションで、同社の展望を披露した。
「Microsoftは新しい分野に参入する計画だ。それに伴い、当社を支援してくれるパートナー企業を必要としている」と同氏。
バイラム氏はExpressionツール群をパートナー企業にもたらす主要な好機について、競争的差別化、ツール/コントロール、トレーニング、およびツールセットの4点だと説明している。コントロールとは、アプリケーションの一部の機能や動作を可能にする、再利用可能なソフトウェアコンポーネントだ。
Microsoftがデザイン分野への参入を目指す背景には、デザイナーや開発者が同社の現行ツールや今後提供されるツールを使ってコラボレーティブに構築できるアプリケーションのユーザーエクスペリエンス(UX)の改善を支援したいという同社の目標がある。
「当社には、リッチな環境で作業するためのプラットフォームがある」とバイラム氏は語り、Ajaxベースの開発ツール「Atlas」、WPF/E(Windows Presentation Foundation Everywhere、社内ではコードネームでJoltと呼ばれていた)、および.NET Framework 3.0(WinFXと呼ばれていた)に言及している。
バイラム氏によれば、.NET Framework 3.0は4つの主要な要素で構成される。Avalonとも呼ばれているWindows Presentation Foundation(WPF)、Windows WF(Workflow Foundation)、CardSpace(InfoCardと呼ばれていた)、Indigoとも呼ばれているWindows Communication Foundation(WCF)の4つだ。
WPFは、Expressionシリーズの主要な構成要素だ。
バイラム氏によれば、WPFはデザイナーと開発者間のより良いコラボレーションを可能にする統合型のコンテンツ/アプリケーションモデルだという。
さらにバイラム氏によれば、Microsoftは「デザイナーはアプリケーションがユーザーに提供する感情的な結び付きを大切にし、一方、アプリケーション開発者はアプリケーションの機能的な側面を重視し、概して、適切なデザイン作業を行うのに必要となる技術を備えていない」との前提で一連の取り組みを進めている。
そこでMicrosoftが追加したのがXAML(Extensible Application Markup Language)だ。XAMLは、ユーザーインタフェース(UI)のエレメントがどのように表示されるかを記述するためのXMLベースのマークアップ言語だ。
バイラム氏によれば、Expressionシリーズは以下の要素で構成される。専門的なイラストレーション/ペインティング/グラフィックデザインツールの「Expression Graphic Designer」(Acrylicと呼ばれていた)、デスクトップ/Webアプリケーション向けのリッチなUIを開発するためのデザインツール「Expression Interactive Designer」(Sparkleと呼ばれていた)、リッチなユーザー体験を提供するWebサイトを構築するためのデザインツール「Expression Web Designer」(Quartzと呼ばれていた)だ。
Microsoftは今年6月、Atlas、Expression Graphic Designer、Expression Interactive DesignerのCTP(コミュニティー技術プレビュー)版をリリースしている。
また、バイラム氏がWPCでのプレゼンテーションで見せたスライドによれば、Expression Graphic DesignerとExpression Interactive DesignerはMicrosoftの2008年会計年度にリリースされる見通し。
さらに同様のスライドによれば、Expression Web Designerは、バイラム氏が「今年の年末に」と言っていたように、2006年中に提供されるもよう。
だが、ある出席者に「パートナー企業は2008年までグラフィックデザインとインタラクティブデザインに何を使うべきか」と尋ねられ、バイラム氏は「これらの製品のリリーススケジュールはまだ決まっていない」とだけ答えている。
その後、Microsoftの広報担当者も次のように語っている。「Expression Graphic DesignerとExpression Interactive Designerについては、いずれも正式な出荷日は決まっていない」
一方、ExpressionシリーズなどのMicrosoftのデザインツール群がパートナーにもたらす好機について、バイラム氏は「パートナー各社は、顧客が開発サイクルの早期の段階でデザインを取り入れ、より良いアプリケーションを開発できるよう支援することで、顧客に競争的差別化を提供できる」と語っている。
ツールとコントロールについては、「Expression Web Designerには拡張性モデルがあるため、パートナー各社はプラグインとWPFツールを作成できる」とバイラム氏は語っている。
同氏によれば、さらにMicrosoftはパートナー各社がASP.NETやAtlasコントロールのほか、ExpressionコントロールやXAMLエクスポーターを開発することにも期待している。
実際、ニュージャージー州イーストウィンザーのInfragisticsは、人気の高い幾つかのコントロールについてWPFバージョンを開発している、とバイラム氏。
そしてInfragisticsはWindows Presentation Controlsの早期導入プログラムを管理している。
一方、コロラド州ボールダーのElectric Rainは「ZAM 3D」と呼ばれるツールのリリース準備を進めている。Microsoft WPFを使って次世代Windows OS「Vista」向けの新しいアプリケーションを構築する開発者とデザイナー向けの3Dモデリング/アニメーション製品だ。
Electric Rainの幹部によれば、ZAM 3Dは3Dモデル/シーンをXAMLフォーマットにエクスポートし、Expression Interactive Designerとシームレスに統合できる。
さらにバイラム氏は、「Microsoftがデザインツールという新分野に参入するということは、当社がトレーニングやMicrosoft CPLS(認定ラーニングソリューションパートナー)用のコースウェアなどの面でわれわれを支援してくれる企業を必要としているということだ」と語っている。
またバイラム氏は、現在、Macromedia Dreamweaver(現在はAdobe Systemsの傘下)、Microsoft FrontPage 2003(終了間近)、Microsoft Visual Studioのいずれかを販売しているMicrosoftのパートナー企業は、Expressionシリーズを抱き合わせ販売できると指摘している。
「現在Dreamweaverを販売しているのであれば、こうしたMicrosoftツールがAdobeのデザイナーツール群の対抗馬になるのは確実だ」と同氏。
またバイラム氏は、Expression Graphic Designerはどの製品に一番似ているかと尋ねられ、「どうしても既存製品に例えなければならないとすれば、Adobe IllustratorとPhotoshopを組み合わせたようなものと言えるかもしれない」と答えている。
Editorial items that were originally published in the U.S. Edition of “eWEEK” are the copyrighted property of Ziff Davis Enterprise Inc. Copyright (c) 2011. All Rights Reserved.