SAPがOracleにマーケットシェアを奪われつつあるという説を否定しようとする同社の姿勢は、少々気になるところだ。ERPやSCM、PLMの領域でしのぎを削る両社の動きを分析する。
SAPの第二四半期における収入がアナリストの予測を下回るという情報が事前に漏れてしまったため、同社による7月20日の収支報告にはそれほど注目が集まらなかったが、Oracleにマーケットシェアを奪われつつあるという説を否定しようとする同社の姿勢は、少々気になるところだ。
あるアナリストの話によると、SAPは買収計画に関する発表を行う可能性もあるらしい。
これまでのSAPの成長戦略は、買収攻勢を得意とするライバル企業Oracleの戦略とは一線を画していたが、同社にもその必要性が出てきたようだ。
コネチカット州スタンフォードに拠点を置くGartnerのアナリスト、イボンヌ・ジェノベーセ氏は、「今日のSAPが目標を達成するために必要としているのは、BPM(ビジネスプロセス管理)製品だと考えている」と話す。
「企業ユーザーに対してビジネスプロセスを活用する道を示すことができなければ、成功はおぼつかない」(ジェノベーゼ氏)
SAPは多くのBPMベンダーと提携関係を築いている。例えば、IDS ScheerのモデリングツールはSAPの「NetWeaver」スタックの一部となっているし、SAP傘下の投資会社であるSAP Venturesは、BPM実行エンジンを開発するIntalioに資本を投下している。
買収される側の企業にとっては、買収先の企業とすでに協力関係が確立していることが重要な意味を持つが、SAPにはさまざまな選択肢を考慮する余地があると、ジェノベーゼ氏は述べた。
「Powered by NetWeaver」を通じてSAPとパートーナーシップを結んでいる企業の中には、「興味深い買収対象となり得る小規模な企業がごまんと存在している」(ジェノベーゼ氏)という。
同様に、Oracleにも足りない部分がある。ITシステム内でプロセスの設計から実行までを行えるようにする、「modeling-to-execution」機能を提供できていないのだ。
SAPもOracleも、アプリケーションおよびプラットフォーム開発に対してはプロセス中心のアプローチを採用している。こうしたアプローチでは、(既存アプリケーションの)開発(および解体)過程をモジュラーパーツごとに分けられるので、ユーザーはビジネスプロセスに基づいたコンポジットアプリケーションを作製することが可能になる。
さらに、SAPはNetWeaverを、Oracleは「Fusion Middleware」を用いてそうしているように、ミドルウェアインフラストラクチャの統合も実現できる。
しかしながら、SAPが抱える膨大なユーザー数に比して、同社の「mySAP ERP 2005」プラットフォームへのアップグレードを行っているケースは非常に少ない。一方のOracleは、「Fusion Application」スタックのリリースまであと2年間の余裕がある。同アプリケーション群は、Fusion Middleware上で利用されることになる。
いずれの製品を使用しているにせよ、ユーザーは一気にアップグレードすることにはためらいを感じており、現時点では現状を静観する構えを取っている。
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