緩やかな著作権保護、Officeウィザードがオープンソースとの架け橋に?

Officeの新しいウィザードでは、Creative Commonsライセンスをドキュメントに容易に追加できる。Microsoftとオープンソースコミュニティとの架け橋を築く上で一役買えるかもしれない。

» 2006年07月28日 07時00分 公開
[Paul DeGroot,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版

 Officeの新しいウィザードは、Creative Commonsライセンスをドキュメントに容易に追加することができるため、より規制の緩やかな著作権保護の促進に役に立つ可能性がある。オープンソースコミュニティはしばしばMicrosoftを敵対視する傾向にあるが、同ウィザードは同社とオープンソースコミュニティとの架け橋を築く上でも一役買えるかもしれない。

Creative Commonsとは

 Creative Commons(CC)は、サイバー法の専門家グループにより2001年に設立された団体で、インターネット上で公開されているデジタルデータの保護に取り組んでいる。このようなデータをめぐっては、大きな著作権侵害問題が発生している。同団体は、エンドユーザーのデータ利用をほとんどあるいはまったく認めない従来の“不許複製・禁無断転載”型の著作権保護と、オリジナルの作成者に対する保護がまったくない“パブリックドメイン”を折衷した著作権のあり方を模索しており、ユーザーが貢献しあうというインターネットの長い伝統を守ろうとしている。

 同団体は、テキスト文書、Webページ、写真、ビデオ、授業計画からアーキテクチャ設計までをも対象にして一連の著作権ライセンスを開発している。これらのライセンスではすべて、作品の著作権は作成者に帰されるが、商用利用や派生著作物の作成と配布を認めるなど、エンドユーザーにもさまざまな権利が与えられる。

 CCライセンスは一度ドキュメントや画像に適用すると取り消すことはできないが、著作権保持者により別の形での利用を許可できる。例えば、あるドキュメントに非商用のCCライセンスを適用していても、著作権保持者から許可を得れば、他のユーザーがこれに別途ライセンスを適用して商用目的で利用することが可能だ。

Office向けウィザードの有用性は?

 今回提供されたOfficeのCreative Commonsユーティリティでは、ユーザーが使用するCreative Commonsライセンスを選択できる。ライセンスを選択すると、Creative CommonsのWebページへのハイパーリンクがドキュメントに追加される。このページには、適用される権利についての詳細な説明が掲載されている。

Creative Commonsライセンス適用ウィザードの画面

MicrosoftのCreative Commonsライセンス用ツールを使用すると、Officeで作成した作品に適用するライセンスを選択できる。この画面は、PowerPointドキュメント上でウィザードを起動し、ファイルに埋め込むCreative Commonsライセンスを選択する様子を示している。“Finish”をクリックすると、URLリンクを含む新しいスライドが作成される。このリンクをクリックすると、Creative CommonsのWebサイト上のページが表示され、このライセンスによって許可されている特定の権利や、ライセンスの完全な法的表示へのリンクが表示される。


 Creative Commonsライセンスの利用が進めば、作品をデジタルデータで公開するユーザーはもとより、広告企業やマスメディアにとっても役に立つ可能性がある。このような企業では、使用したい作品の製作者を特定できないことがあるためだ。

 また、作成者の功績を保護し、製作者が各自の作品に対してある程度のコントロールを保ちながら、共有、再利用、派生著作物を認めることもできるという柔軟な著作権のあり方をインターネット上で広めていく上でも有用だろう。

 そしてMicrosoftとしては、このような取り組みに参加することで、オープンソースや派生ライセンスといった考えに敵対的であるという同社のイメージを和らげられるほか、Officeを共有性の高い文書を作成できる優れたツールとして位置付けることができるかもしれない。

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