対MSの罰金制裁に続き、Vistaへ伸びるEUの独禁法調査(1/2 ページ)

欧州委員会はMicrosoftに対し、十分な技術文書を公開していないとして3億5700万ドルの罰金を科した。罰金額は今後引き上げられる可能性があるうえ、Windows Vistaの特定の機能に対しても独占禁止法違反の調査が開始される。

» 2006年07月31日 07時00分 公開
[Matt Rosoff,Directions on Microsoft]
Directions on Microsoft 日本語版

 欧州連合(EU)の公正競争法の執行機関である欧州委員会は米Microsoftに対し、Windowsクライアント/サーバが使用する通信プロトコルの文書化が不十分だとして、2億8050万ユーロ(3億5700万ドル)の罰金を言い渡した。今後、Microsoftの対応に改善が見られない場合は、罰金額が引き上げられる可能性もあるという。また欧州委員会は、Windows Vistaに関しても、独占禁止法違反の可能性について綿密に調査すると発表した。

 これとは別のニュースとして、米国の判事は、1990年代初頭にペンコンピューティング技術を販売していたGo Computingの創業者がMicrosoftを相手取って起こした独禁法訴訟を棄却した。またMicrosoftは、同社の「Windows Genuine Advantage」プログラムがスパイウェアのような動作をするとして、新たに2件の訴訟を起こされている。

技術文書をめぐる論争

 欧州委員会による最新の罰金命令は、2004年4月にMicrosoftに対して下された独禁法訴訟判決に端を発する。この判決において、欧州委員会は同社に対し、4億9700万ユーロ(6億1300万ドル)の罰金を科したほか、欧州のOEMベンダー向けにWindows Media Playerを搭載しないバージョンのWindowsをリリースするよう命じ、また、サードパーティソフトウェアをWindowsクライアントと連携させるために必要となるWindowsの通信プロトコルを文書化するよう命じた。Microsoftはこの判決を不服とし、第一審裁判所に上訴したが、判事は上訴が決定するまでは判決に従うようMicrosoftに命じている。

 Microsoftは既に4億9700万ユーロの罰金を支払っており、Windows Media Player非搭載バージョンのWindowsをリリースするという命令についても、多少の議論はあったものの、既に応じている。だが通信プロトコルの要件をめぐっては、同社と欧州委員会は幾度も衝突を繰り返している。欧州委員会は、「Samba(オープンソースのファイル/印刷ソフトウェア)などのサードパーティのサーバソフトウェアがWindows Serverと同レベルでWindowsクライアントPCと連携できるようにする」という本来の目的を果たすためには、Microsoftが作成した技術文書では不十分だと主張している。

 一方、Microsoftは裁定を遵守すべく最善を尽くしたと主張し、そもそも欧州委員会の裁定の内容が明確ではなかったと指摘している。だが、Microsoftの対応に影響を及ぼした要因はほかにもあるだろう。Microsoftはこの訴訟の事前審問において、自社が知的所有権を有する技術をオープンソース製品に組み込めるようにすれば、自身の発明に対する自社のコントロールを弱めることになると懸念を示していた。

 欧州委員会は2006年7月、技術文書に関する裁定を遵守していないとしてMicrosoftに罰金の支払いを命じた。罰金額は2005年12月15日(欧州委員会がMicrosoftに対して初めて罰金の可能性を警告した日)から2006年6月20日(裁定遵守の期限)までの期間を対象に1日当たり150万ユーロと決定された。これは、当初警告されていた1日当たり200万ユーロよりは少ない額だ。だが欧州委員会の競争政策担当委員Neelie Kroes氏によれば、今後もMicrosoftの対応が改善されていないと欧州委員会が判断した場合には、罰金額は7月31日以降、1日当たり300万ユーロに引き上げられる可能性もあるという。

 それより先に解決策が用意されることになるかもしれない。Microsoftの法務責任者Brad Smith氏は今回の罰金制裁を激しく非難する声明を発表し、欧州委員会がMicrosoftに明確な要件を示したのは2006年4月になってからだと主張している。Smith氏によれば、Microsoftはそれ以来、欧州委員会が定めた6つのマイルストーンをすべて達成しており、現在も、欧州委員会が次に定めた7月24日の期限を満たすべく、300人のスタッフが専任で取り組んでいるという。

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